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34.敗走
「無理だよ。こんなの。」
泣きながら黒髪の男が走っている。
「黙って走れ。殺されてえのか。」
先頭を行く別の黒髪の男が叫んだ。
「おい。団長さんよ。どうかしろ。」
リーダー格らしき3人目の黒髪の男が後ろを振り返りながら言う。
3人の後ろを走っていた騎士団長は、すぐ横を走っている兵士に言った。
「一番後ろ行って、オーク止めてこい。」
「へ?なっ自分が。」
情けない声を出しながら兵士は抗議をするが、騎士団長は兵士のわき腹を持っていた剣の鞘で突いた。
兵士はうめき声を上げながらうずくまり、他の兵士に追い抜かされていく。
誰も彼を助ける者はいない。やがて彼は迫りくるオークの集団に取り囲まれ、嬲られ、頭を首から引き剝がされて殺された。
キッコーリ村の防壁が完成したころ、オーク村を殲滅すべく王都を出立した勇者3名を含む王国軍は、キングオーク率いるオークの軍勢に敗れ王都へと逃げ帰ることとなる。




