23、タリカとの再会
レイとジャミ、ショウダイたち3人は、カツラを着けて装備を付け替える。
アダマンタイト製の武器やブラックドラゴンの皮鎧は目立つためだ。
ライバは留守番だ。
目立つ上に、ロックウッドの留守中、要塞の警戒もしなければならないという理由だ。
ふてくされたライバに見送られて、レイたちは要塞を出発する。
タリカ大領の領都は元シュミム王国の王都で、今は復興の途中である。
マオハリ率いる魔族と魔物に蹂躙され建物に大きな被害を受けたが、レイの奴隷たちが修繕し一見復興したようにみえる。
実際には、避難した市民のほとんどが戻らず、真新しい建物が立ち並ぶが閑散としていた。
ドイン領からレイの家経由で元キッコーリ町近くの魔法陣に移動したレイたちは、レイの奴隷が用意した馬車に乗って王都を目指す。
レイたち5人は荷物に紛れて、ロックウッドたちは馬車の前方に悠然と座っていた。
領都に入る時見つからないかとレイはドキドキしていたが、そこはロックウッドの人気と信頼によるものなのか、全く馬車の中をチェックされずに通過することが出来た。
「良かったあ。」
レイの隣でジャミが汗を拭っている。
「でもタリカの屋敷に入るのにまだチェックされるんじゃないか。」
「あっ、そうだ。どうしよ。」
ジャミが焦っている。
「大丈夫だ。事前に連絡してある。」
「さすがあ。」
ジャミがロックに感心している。
タリカは元王城ではなく、レイの奴隷たちが修繕した元商人の屋敷に住んでいる。
タリカが言うには、「あんなん住めるわけないだろ。」だそうで、ローミの最期を知っている身としては確かにそうだと思う。
屋敷の表は大通りに面しており、裏には広い庭ある。
馬車は屋敷の裏側にまわり、門前で形式的なチェックを受けた後、レイたちは馬車ごと入っていった。
大きな玄関に馬車をつけ、開かれた扉から素早く中に入っていく。
衛兵たちは事前に話を聞いているのか何も言わない。
中で働いている使用人も、元レイの奴隷が多いからか特に驚くことも無い。
レイたちは騒ぎにならなかったことに、拍子抜けしたと同時にホッとしていた。
少し気が緩んでいたように思う。
ロックを先頭にレイたちがタリカの執務室に入る。
元タリカ領砦の執務室とは段違いに豪奢な内装だ。
タリカは疲れた顔をしていたが、側にいる部下に憎まれ口をたたくほどには元気な様子だ。
部下の反対側にはジャイルが無表情で立っている。
ジャイルはさすがと言うべきか、警戒しているにも関わらず全く威圧感が無い。
だが隙も見せず、いつでも攻撃に移れるように右足をわずかに前に出していた。
タリカの前には見知った黒髪の後ろ姿が見える、
穏やかな口調で、タリカと何かを話していた。
アッカディー王国の国王アッカだ。
タリカ大領復興のため、最近は魔法陣を使って頻繁に来ているようだ。
半分は仕事のため、残り半分は自分の可愛い弟に会うために。
ロックたちが入ってきたことにタリカは気が付いたようだ。
再会に喜んだレイは、思わずロックの前に出た。
その瞬間、剣先がレイの目の前に迫る。
「止まれ、薄汚い咎人め。」
ジャイルの冷たい声が響き渡った。
「今この場で殺してやる。」




