21、ロックウッドとの再会
「レイ、この後どうすんだ。もうすぐ夜だぞ。」
女装したジャミが聞いてきた。
「ドイン領に行く。」
「ロックウッドの所?」
「そうだ。今の時点では一番安全な所だ。」
レイは考えた末、ドイン領に行くことにした。
魔族領に近いため、アッカディー王国の貴族連中はうかつに近づけないだろう。
それに加えて、レイが3人の勇者を誘拐していないことをロックやミナは知っている。
事情を全て話すことは出来ないが、時間稼ぎをするくらいは出来るだろう。
魔族領にいるザムとも合流しやすい。
合流した後、今後どうするかを決めることにする。
「ライバさん、お待たせしました。」
家の地下室に戻ったレイは、ライバに謝る。
「いえ…、妻と息子は元気でしたか?」
「はい。ライバ領は今のところ異常ありません。」
ライバはホッとしたようだ。
「夜ですが、今からドイン領に行きます。」
レイの提案にライバは頷く。
「それが良いでしょうね。今はロックウッドの皆さんしかいないですし。人目につかないのでバレる心配は少ないでしょう。」
ドイン領は人集めに苦労している。
魔族領に近く魔族や魔物との戦いが避けられないため、ある程度の強さが無いと死ぬだけだ。
ドインの部下がほとんど死に、元シュミム王国にいたAランクやBランクの冒険者は小国群に行ってしまった。
ロックが貴族となり、そのままドイン領の領主をしているが、近隣の町や村は復興していないため、領内にほとんど人がいない。
ロックウッドのメンバーと生き残ったドインの部下、レイの奴隷から志願した数十人が要塞に詰めているだけだ。
レイたちはドイン領要塞近くの魔法陣に移動し、警戒しながら夜道を進んでいく。
しばらく歩くと岩山のような要塞が見えてきた。
初めてここに来た時はドインも元気に出迎えてくれ、男たちがひしめき合っていて賑やかだった。
だが今は、灯が無くしんと静まり返っている。
「ここまで来たがどうするかな。」
勢いで来てしまったが既に夜だ。
岩に偽装した扉を叩いても誰も出てこないかもしれない。
レイが扉の前に立ちノックしようとしたその時、扉がバッと開く。
「わっ。」
レイが思わず後ずさると、笑顔のミナが飛び出てきた。
ミナの後ろから前よりも柔和な顔になったロックが出迎える。
「よお犯罪者、久しぶりだな。」




