16、再びセイクルズの拠点へ
レイたちはマイロから離れた所で話していた。
「レイ、どうだ。」
「嘘は言ってないと思う。」
レイのスキルでマイロが嘘を言っていないことが分かる。
しかし。
「灰色なんだよな。ジャミと同じで。」
「危険だな。」
「何だよお。良い奴かもしれないだろ。」
善良か悪人かの判断は難しい。
レイのスキル『真実を見る目』で分かるのだが、真っ白・真っ黒な人間はそうそういない。
ほとんどの人間が灰色で、色の濃淡が違うだけだ。
マイロも丁度真ん中の灰色で嘘は言っていないが、善人かどうか判断するのは難しい。
「ここで事を起こしてもポポルック族と争うだけだ。」
「そうだな。様子見といったところか。」
とりあえずマイロはこのままという結論が出た。
「で、次どうすんの?どこ行く?」
ジャミがザムに尋ねる。
「そうだな。俺はディーディーと一緒に魔族領に戻る。親父に今のを報告したいしな。」
「レイ、俺たちは?」
「セイクルズの拠点に行くか。ここからタリカ大領に行くより近いからな。」
セイクルズの拠点にはレイが作った転移魔法陣がある。
そこから久しぶりに町に戻ることにする。
レイたちはトホス王国に戻り、それぞれ出発の準備をする。
留守中、ディーディーはショウダイたちやトホス王国の人々と仲良くなったようだ。
皆で集まってキャッキャしている。
「ザム、1人で大丈夫か。」
「問題ない。何かあったら連絡する。」
「分かった。俺も町に戻ったらもう1つ魔法陣を作る。町と魔族領行き来出来る方がいいだろ。」
「そうだな。レイたちも気を付けろ。」
「ああ。じゃあな。」
ザムはディーディーに乗って一気に飛び立った。
昼過ぎだがディーディーの飛行力なら今晩中に魔族領に着くだろう。
レイもポッタたちに挨拶して、ジャミやショウダイたちと共に南へと走り出した。
歩くと3日ほどかかるが、走れば1日で着くはずだ。
レイは休憩を取るごとにショウダイたちにマイロの話をする。
ショウダイたちの顔は青ざめていた。
「俺たちが逃げたのは正解だったんすね。」
「うん。」
「殺されて魔石埋められてって。嫌だあ。」
すんでの所で助かったことを喜んでいる。
「だから気を付けろ。見つかったら無理やり魔族にされるぞ。」
「うん。」
ギルガ神聖国やラガッシュ帝国の動きが分からない。
ギルガ神聖国はショウダイたちを血眼になって探しているだろう。
ラガッシュ帝国はキングリッチを倒された後、魔族領を激しく攻撃するようになった。
勇者がいると思っているのか、魔族を攫って解剖したいのか、帝国の目的が分からない。
夜野宿をして、レイたちは夜明け前再び走り出す。
小国群に入っても町に寄らず、そのままセイクルズの拠点を目指した。
町に寄って情報を手に入れたかったが、一刻も早く町に戻りたい。
トムに会いたい。
その一心でレイは走り続けている。
トムに会って、アトラントやマイロから聞いた話をしたい。
今後どうするか、トムと話し合いたい。
ハリナのお腹も大きくなっている頃だろう。
森の中にあるセイクルズの拠点が見えてきた。
レイは拠点を見てからセイクルズに連絡していないことを思い出す。
レイが腰に付けていた通信袋に手をかけるが、その前に窓の1つが開いてセインが顔を出した。
「レイ。」
懐かしい顔と声に、レイは思わず笑顔になる。
一気に扉の前に近づくと、タイミングよく扉が開いてセインが飛び出してきた。
「セイン。久しぶり。」
レイの言葉にセインは反応しない。
それどころか、焦っているように見える。
「レイ、何やったんだ。」
「何って?」
「ギルガ教会から通達があった。冒険者ギルドと各国宛だ。お前、指名手配されてるぞ。」




