26、鎖国
セイクルズの拠点から旅を再開して一カ月半後、レイたちはラガッシュ帝国との国境の町に到着した。
この町は小国群の中で一番栄えている。
帝国と商売をする商人たちの拠点になっているからだ。
レイは警護した商隊の隊長から任務完了のサインをもらい、冒険者ギルドへと向かった。
ここはくすんだ赤を基調とした高い建物が所狭しと立ち並び、雑多な人々が町を行きかう。
冒険者ギルドで任務完了を報告して金をもらい意気揚々と酒場に向か…うことは無かった。
皆元気が無い。
特にザムは元気が無い。
「皆、すまない。わざわざ来てもらったのに。」
「仕方ないよ。こんなことになるとは思わないじゃん。」
ジャミが慰める。
約2か月前、ラガッシュ帝国は突然国境の封鎖を宣言した。
それまではBランク以上の冒険者や商人は厳しい審査を受けながらも入出国が出来ていた。
それが2か月前、帝国が特別に許可をした商人以外は入国出来なくなってしまった。
ショウダイが小声で話す。
「密入国…出来ないかな?」
「無理だろう。あの高い壁が大森林まで続いてるって話だし、ジャミみたいな斥候を大量に配置してるみたいだし。」
「そんなリスクは取れない。」
ザムが極力リスクは取らないと言う。
実際に密入国しようとして捕まった人がいるらしい。
貿易で財を得ていた商人たちはかなり切羽詰まっている。
Bランク以上の冒険者も、帝国内で魔物討伐などをして稼いでいたのが稼ぎ0になった。
他の町へと出ていく人が最近多くなっている。
まだ町に残っている人も多いが、元気があまりない。
「他にルートは無いのか?」
レイは恨めしそうに国境の壁を見ながら言う。
「あるにはあるが…。」
ザムが珍しくどもった。
「危険なのか?」
「危険といったらそうだろう。」
「壁超えるのとどっちが。」
「まあ、密入国よりは良いかと思うが。」
「じゃ、行こう。」
あまりに早くレイが決断するため、ザムが驚いている。
「どんなルートか聞かないのか?」
「それしかない。密入国出来ないし、タリカ大領に戻ってディアクス山から行くか?」
「それも時間かかるし無理だな。とりあえず行って実際に見てくれ。」
「ああ。」
ザムを先頭に、レイたちは国境の町を出て南へと歩いていく。
3時間ほど歩いただろうか、夕暮れ前に小さな町にたどり着いた。
だがザムは町に入らず、ぐるっと迂回して更に南へと進んだ。
前方の丘の向こうから前世に嗅いだことのある臭いがする。
レイが目を輝かせていると、
「ここからも行けると思うんだが。」
丘を登り自信無さそうに言うザムの目の前には、果てしなく続く海が広がっていた。




