31.防壁完成
防壁を早く完成させようと連日気を失うまで魔法を使い続けるレイを見て、トムとマールはキッコンにある相談していた。朝早くトムから金を受け取ったキッコンが王都へ出かけていき、大量にあるものを仕入れて帰ってきた。
「これは?」
手渡された液体の入ったガラス瓶を見て、レイがトムとキッコンに問う。
「魔力ポーションだよ。王都行ってあるだけ買ってきた。」
「自分たちに出来ることはこれくらいですから。」
これを飲めば魔力がある程度回復するという。
村人たち総出で作業するよりもレイの魔法で作業した方が効率良いが、皆1人に負担させてと申し訳なく思っていて、トムを含め村人が金を出し合って買ってきたという。
「ありがたい。これで作業が捗る。」
レイは魔力ポーションを飲みながら防壁づくりを続けた。
村人たちは、レイの作った防壁の細かい部分に練った土を塗り込み補強していく。
トムはというと皆が安全に作業出来るように、1人で魔物狩りを続けていた。
そしてハイオーク出現から1か月が経とうとする頃、遂に防壁が完成した。
高台を囲むようにして高さ約20メートルの壁がそびえたつ。
上の方に小窓が付いており、そこから弓や魔法が撃てる仕様だ。
下の部分は小窓から攻撃をする人たちが立つ歩廊と、それを天井にして食料や武器を保管できる空間が並ぶ。
最後の仕上げにレイが土魔法で更に補強し、シュミム王都をはるかに凌ぐメシュ大陸屈指の強固な防壁となった。
「はあ。こりゃこりゃ。」
村長は想像よりもはるかに立派な防壁を目の前にして言葉が出ない。
木枠をレイの土魔法で塗り固めた開閉式の門も完成し、皆で引っ張り上げて設置する。
「1か月で出来るとはすごいねえ。」
アアナも宿屋から出てきて周りを見渡している。
そんなアアナはいつものエプロン姿とは違い、鎧を身に着け斧を担いでいる。
「どうしたんです?アアナさん。」
思わずトムが声をかけると、
「私、元Cランク冒険者だよ。あんたたち手伝うに決まってるっしょ。」
と言って豪快に笑った。




