22、キングウルフと初対面
「またお前らか。別の場所に移せと言ったであろう。」
うんざりした様子でキングウルフが頭を上げた。
「すいません。落ち着いたら移しますんで。」
レイが謝るとキングウルフは再び頭を前足の上に乗せ寝始めた。
「おっおっきい。」
「迫力あるな。」
「しゃべってる…。」
セイクルズは初めて見るようで興奮している。
「生きてるうちにキングウルフが見れるとはな。」
「そうね。美しいわ。」
「キングウルフは凶事の前触れと言われてる。フェンリルが現れる前、必ずキングウルフが目撃されるらしい。」
マッチョな魔法使いジョナが説明する。
レイは居心地が悪くあえて言わなかったが、ジャミがうっかり口を滑らせた。
「もういるんだよなあ。」
ジャミの呟きにセイクルズのメンバーの視線がレイの足元にいる白銀の狼に注がれる。
剣士のクルンが震える手でアレスを指さした。
「レイ、もしかしてその子。」
「そうだが。」
「うへえ。」
セインが間抜けな声を出した。
僧侶のキミイが思わずため息をつく。
「レイってほんっとに。エル・キャットが従魔だわ。フェンリルが従魔だわ。2万人も奴隷いるわ。魔法全種類撃てるわ。魔族倒すわ。何なの、あんた。」
「ははっ。」
レイは頬を掻きながら笑うしかない。
「まあ、勇者ってことなんだろ、それが。とりあえず迷惑かけそうだし行くか。」
「そうだな。じゃあキングウルフさん、お邪魔しました。」
「ふん。」
キングウルフが鼻を鳴らしたのを合図に、レイたちはライバの町へと向かう。
タックとフクンをおんぶして走りながら、レイはセイクルズに説明した。
「ライバさんは死んでしまって、今はライルが領主してます。」
「惜しい人を亡くしたね。」
セインがしんみりしている。
「で、今は俺の従魔なんで間違っても倒さないでください。」
『!!!!』
セイクルズの全員が驚きのあまり無言になった。
「あのさあ、レイさあ。」
セインの呆れた声はレイの耳に入らない。
これから始まるであろう惨劇に、レイは身がすくむ思いだった。




