21、アッカディー王国貴族の暴走
レイはチルの言葉に眉を吊り上げた。
「何で俺が俺の家で自由に出来ないんだ。」
「すいません。事情があって。説明します。」
チルによると、アッカディー王国の貴族たちが衛兵を連れてレイたちの町に滞在しているらしい。
以前にダンジョンを使わせろ、ダンジョンの作り方を教えろと言ってきたり、町の発展を妨害してきた連中だ。
転移魔法陣の存在を耳にしたらしく、今度は魔法陣を使わせろと言ってきているらしい。
ダンジョンも諦めていないのか、ダンジョン使わせろ・ダンジョンの作り方教えろ・転移魔法陣使わせろとタリカに迫っているらしい。
表向きはアッカディー王国の発展と兵の強化のため、タリカ大領の復興のためと主張しているが、本当の理由は分からない。
タリカが貴族連中の要求を突っぱねているが、貴族の斥候らしき人物がレイたちの家の周りを偵察して、隙あらば中に入ろうとしているそうだ。
ジャイルをはじめとしたタリカ直属の兵士が外を警戒しているが、町に居座っている貴族たちはアッカディー王国の経済を支える貴族でもあるため、追い返したり斥候を捕まえるなどは出来ないらしい。
そのため、チルたちはレイの家と魔法陣のある地下を封鎖し、容易に人が入れないようにしている。
「お前たちはよく入ってこれたな。」
「急いで隣の僕たちの家から入れる通路作ったんです。」
「うっ。」
エラの言動に勝手に何してくれるんだと思ったが、今は緊急事態だ。
レイはグッと堪えてエラに言う。
「後で戻しておいてくれ。」
「はい。」
「するってーと、どうしよっか。戻りたくないしね。」
ジャミの言葉にセイクルズのメンバーが困った顔をする。
レイは地下を見渡しながら考える。
地下にはタリカ大領の各町近くにある魔法陣と繋がっている転移の魔法陣が複数ある。
キッコーリ村近く・ドイン領・ドイン領とローミ領の境・ライバ領迷いの森の中…。
今作った魔法陣も含めると5つ起動している。
砦の方に領都と繋がる魔法陣が1つあるが、今は外に出られないため使えない。
レイはしばらく無言だったが、あることを決めるとセインたちに言った。
「別の魔法陣を使おう。」




