19、救援
セイクルズの拠点は町から離れた森の中にあった。
「ねえ。今日の宿って。」
「我慢してくれ。タックとフクンが町中の冒険者に狙われてんのに、泊まれない。」
「うう。やっぱり。」
アサミが悲壮感満載の声を出すがレイは気にしない。
「ジャミ、付いてきてる奴いるか。」
「今のところはいないね。早く町離れたからあんまり情報広がってないかも。」
「そうか。」
少し安堵しながらレイたちは足早に向かう。
1時間ほど歩いてセイクルズの拠点に着いた。
かなり大きな屋敷で要塞のように窓が小さく、頑丈な扉が付いており物々しい。
レイは扉のノックを鳴らしながら大声で叫んだ。
「レイだ!セインいるか!」
扉についている小窓がわずかに開くとすぐ閉じた。
今度はいきなり扉が開き、大柄のジョナが出てきた。
「ああっ。レイ、久しぶり。すぐ入ってくれ。」
ジョナに押し込められるようにレイたちは屋敷の中に入る。
ジョナは扉を閉め、念入りに鍵を閉めた。
「奥にセインがいるから会ってくれ。」
レイたちが案内されるまま廊下を進み左手の扉を開けるとセインがいた。
窓のない部屋で少し薄暗く、セインの姿があまり見えない。
「…レイか。」
「セイン、久しぶり。この部屋って。」
「…後ろの連中は誰だ。」
「ジャミは知ってるな。後は俺の奴隷のザム。そっちの男はショウダイ、その右はアサミ、一番右はユウナ、3人は勇者だ。」
「…信用できるのか。」
「出来る。」
「そうか。」
少しホッとしたようなセインがレイに近づいてくる。
レイたちの後ろにいたジョナが明りを点けると、セインが何かを抱えていた。
「それって。」
「かわいい!」
「ちっこ~い。」
レイの後ろで女性2人がキャアキャア言っている。
セインは子猫を抱えていた。
セインの腕の中でビックリしたようにキョロキョロしている。
「この。きゃわいい奴って。」
レイはよだれを垂らさんばかりにセインに迫りくる。
セインはレイに触られないようにガードしながら、
「エル・キャットの子猫だ。」
「ああ~。かわいい~。」
思わず笑顔になるレイに対して、セインの表情は暗い。
子猫をしばらく愛でていたレイはセインの様子に気が付いた。
「セイン、どうした。」
「レイ、助けてくれ。」
暗い表情のセインがレイに助けを求めてきた。




