30.オシュ王都管理長
「けっ。貧乏人が。」
読んでいた手紙を傍らに投げ出し、オシュ王都管理長は悪態をついた。
王都近くにある小さな村からの手紙で、しばらく放置していたが暇だったので読んだところ、ハイオークが村の近くに現れたという。
オークの村が出来ているかもしれないので討伐隊を寄こしてほしいという依頼だったが、オシュは誰も派遣する気は無かった。
金を包んでいない依頼には目が向かないのだ。魔物討伐の嘆願は、各町からひっきりなしに来ている。
机に足を投げ出して酒を飲んでいたところ、突然騎士団長が入ってきた。
足を下ろし騎士団長を睨みつける。
「何の御用で。騎士団長殿。」
「ガキの面倒で疲れててよぉ。酒くれや。」
どうやら酒をせびりに来たらしい。
オシュは空いているグラスに酒を注ぐと騎士団長に渡した。
聞けば召喚した勇者3人の教育に疲れ果てているという。
何かにつけて訓練や魔物討伐をサボり、頻繁に酒と女を要求する。
「早く死んでくんねえかな。あいつら。」
教会に聞かれたら大目玉なことを騎士団長は言った。
「魔族に対峙させないと、死亡を教会に納得してもらうのは無理だろ。」
「手っ取り早くレベル上げてえな。そうすりゃ早くドインの所に送れるし。」
ドインは魔族領に接する領の大領主だ。他の3人の大領主と異なり、自ら槍を持って魔族と戦っている。粗暴だが筋を通すことにこだわる昔気質の男だった。
騎士団長は足元に落ちていた紙を拾い上げ、中に目を通す。
「はん。オーク村が出来たかもしんねえから兵士派遣してくれだって。面倒くせえ。」
「しかも金入ってねえ。」
「入っててもお前派遣しねえだろ。」
「そりゃそうだ。金が手に入りゃどうでもいいし。」
「まっそうだな。」
2人は酒を飲み続けていたが、騎士団長がふと、
「この討伐に奴ら行かせるか。」
「やんのか?」
「ここから近えし。丁度いいだろ。」
「キングオークがいるかもしんねえ。」
「別にいいさ。失敗しても近くの村が襲われるだけだろ。」
「違いねえ。」
ヘラヘラと笑いながら、2人は酒を飲み続けた。




