10、遺跡
「本当に行くんですか?」
「はい。お世話になりました。無事だったら帰りまた寄ります。」
翌日の早朝、レイはマイロたちに挨拶して大木を出発した。
更に北東へと進んでいく。
大陸の最北東、そこに遺跡があるとザムは話していた。
何故ザムが遺跡の場所を知っているのか。
父親に聞いたと言っていたが、それ以上のことを話してはくれなかった。
レイたちはすぐに戦闘出来るように武器を構えながら前に進んでいく。
最前列がジャミ、そのすぐ後ろにザム、その後ろにショウダイ・アサミ・ユウナが歩き、最後尾はタックとフクンをおんぶし、アレスを従えたレイだ。
最初は最後尾をザムが歩いていたが、何も話してくれないザムに少し不信感を持ったレイが位置を交換した。
何か違和感がある。
だがそれが何か分からない。
レイはあらゆる可能性を考え、自分が最後尾になると申し出たのだ。
早朝から休みなく3時間ほど歩くと突然開けた場所に出た。
「何だここ。」
「何かあったみたいね。」
「こんな山奥に住んでたんだ。」
目の前には所々崩れた巨大な建造物があった。
黒い石が積み上げられ、空を覆いつくすようにはるか上までそびえ立っている。
ツタが絡まり静寂に包まれているその場所は、神聖でいて不気味な場所でもあった。
「何だ?」
ここでも何か違和感がある。
禁足地に入ってから遺跡に近づくにつれて違和感が次第に強くなる。
それどころかこの先から魔族かそれ以上の威圧感も感じる。
レイがその違和感に戸惑っていると、ザムが見透かしたように話しかけてきた。
「禁足地に入ってから違和感無いか?」
「ある。だが何だ。何がおかしい?」
「魔物が1匹も出ないんだ。」
「あっ。」
そういえば、禁足地どころかトホス王国に入ってから魔物に1匹も会っていない。
「何故だ。この先に何がいる。」
レイは剣を握りしめ、ザムを睨みつけた。
「お前の推察通り、この先の魔物が原因だな。行くぞ。」
全員黙ったまま先に進んでいく。
天井は崩れ落ちている部分があり、わずかに青空が見えるのだが、隙間から差す光がかえって不気味だ。
しばらく歩くと前面から急に強烈な光が差し込み、眩しさで目を細めた。
光から目を守るように手をかざすと、前方にある巨大なものを凝視する。
「これは、これは。矮小な人間が。だが面白い。面白いぞ。」
カカカという耳障りな笑い声が聞こえる。
巨大な魔物が、前方の白い壁に磔にされていた。




