5、包囲
「本当に行くんですか。」
ポッタが不安そうにソワソワしている。
レイは黙ってザムを見た。
ザムは力強く頷いている。
「はい。いざとなったら転移の魔法陣使います。」
レイの家には空いている転移魔法陣が1つある。
もしもの時はその魔法陣を使おうと心に決めた。
ポッタたちに手を振り、禁足地へと足を踏み入れた。
トホス王国に生えている木は細くあまり生えていなかったが、禁足地の中は木が鬱蒼と生えている。
「別世界だな。」
木を見上げながらレイが呟いた。
「ジャミ、警戒を怠るな。」
「へいへい。」
ジャミもザムもレイの奴隷だが、既に優劣が付いているようだ。
何故か先輩のジャミが下で、ザムの指示に従っている。
「ん?」
しばらく歩いていると、ジャミが立ち止まって警戒し始めた。
「何かあったのか。」
「誰か…いる。」
「やだあ、どうしよう。」
「構えて。」
「やだあ。付いて来たくなかったあ。」
アサミは既に泣きそうになっている。
レイは指を口に当てアサミに黙るように伝える。
6人は武器を構え、ジャミを先頭に静かに歩いていた。
その後ろを吞気そうに3匹が歩いていく。
「キャアア。」
不意にユウナが悲鳴を上げた。
ユウナの悲鳴が森に響き渡る。
「どうした。」
「何か踏んだ。何か踏んだ。やわいやつ。キモイ。」
ユウナが右足を必死に振っている。
「何でもない。前を見ろ。」
「もうヤダあ。かえるウ。」
最後尾のザムの言葉にユウナは半泣きだ。
「ちょっと。」
先頭をあるくジャミの声が焦っている。
「どうした、ジャミ。」
「囲まれた。」
ジャミが小さく上を指さした。
レイが上を見ると、小人が木にしがみつき弓矢でレイたちを狙っていた。




