4、禁足地
レイは騒然とする周囲を見て、ザムが危険な場所に行こうとしていることを察した。
「大丈夫か。危ない所なんだろ。」
「大丈夫だ。俺がいる。」
ザムは至って冷静だ。
ザムがそれ以上説明しないので、困ったレイはポッタの方を振り返る。
ポッタはレイの視線で、禁足地とは何かを説明し始めた。
「この国の北に広がる森です。たまに冒険者が来るんです。結構強い人が。で禁足地に行くんですけど。」
ポッタがゴクリと唾を飲み込んだ。
「帰ってこないんです。1人として。」
「えっ、怖い。」
話を聞いていたユウナが叫ぶ。
ショウダイ・アサミ・ユウナの3人は、ポッタの話に怯え始めた。
「大丈夫なんですか。そんなとこ行って。」
ショウダイの声が上ずっている。
彼ら3人はまだザムのことを疑っているようだ。
レイは再びザムを見る。
「大丈夫だ。タイミングを見誤なければ。」
「タイミング?」
「以前父が行ったことがあるからな。詳しい地図と情報はもらっている。」
「お前の親父は無事に帰って来れたのか。」
ザムはレイの問いに答えず、
「何かあったら俺が全力で守る。お前たちを逃がす。」
「でも奥には恐ろしい魔物がいるって。ライバ領の迷いの森より危険ですよ。」
ポッタが全力で入るのを止めようとする。
どうやらオーガやワイバーンより危険な魔物がいるようだ。
「その魔物に用があってな。」
「ええっ!」
アサミが悲鳴を上げた。
明日、わざわざ危険な魔物のいる森へと入ろうとしている。
「元々この国は禁足地から他の地域を守るために作られたんです。」
国王も酒を片手に話に加わる。
「魔物が来るんですか。」
「全然来ないです。全く。それがかえって不気味でしてね。」
迷いの森からは時々魔物が出てきて町を襲おうとする。
そのためライバの町は巨大な防壁に守られていた。
トホス王国の城は、城ではなく大きな家だ。
禁足地から出てきた魔物に襲われたらひとたまりもないだろう。
だが、この国は一切魔物に襲われないらしい。
「本当に大丈夫か。ザム。」
「大丈夫だ。任せろ。」
それだけ言うと、ザムは静かにパンを食べ始めた。




