29.人形
1日で必要な本数の木を切り倒し、タックとフクンにしごかれながら5日で切り株を全て撤去した。その後は近くの岩山に行き、風魔法を使って岩の切り出しに勤しむ。
切り株の掘り返しよりも想像しやすいのか杖のおかげか、レイは順調に岩を切り出していった。
途中猫たちから、中に秘密基地を作ってほしいとお願いされ、岩山を綺麗にくり抜いて中の空洞を広げていく。
猫に激甘なレイを尻目にトムもハルバードを使い、岩を切り出していった。
積み上げやすい大きさに切りそろえられた岩は、村人たちの手によって運ばれていく。
岩山をくり抜いた後、さらに木の乾燥場所に行き、風魔法で乾燥させていった。
木の切り倒し作業から15日も過ぎた頃、全ての材料が揃った。
「こんな早く用意が出来るとは。」
村長がわなわなしながら驚いている。
さて全員で防壁を作ろうとしたその時、
『にゃふうううう。」
と猫2匹が村人たちの前に出てきた。
ちっこい猫の実力は誰もが知るところなので、全員黙ったまま見つめている。
「レイ。お主に更なる試練を与えるにゃ。」
重々しい雰囲気を出しながらタックが言い、フクンはその後ろでフンフン言いながら前足をグーパーしている。
「今こそあれを作るにゃ!」
「イエッサー!」
レイが猫たちに敬礼しながら返事し、土をこね始めた。
何をするつもりなんだと村人が固唾をのんで見守っていると、レイは土で人形を作っている。出来上がった人形にレイが杖をかざして
「ドール。」
と呟くと、ムクムクと人形が大きくなり立ち上がった。
『おおっ。』
村人たちが驚く中、レイが
「土台を立てるための穴を掘れ。」
と命令すると人形はどんどん土を掘っていく。
穴を掘った後、
「土台となる木を立てろ。」
と更に命令すると、人形は木の先端を穴の中に入れ、周りを土で埋めていく。
実は防壁作りを始めてからは、家に帰った後もレイの魔力が尽きて気絶するまで修行が続いていた。
その中で、防壁の建設も魔法で出来ないかと考え、レイと2匹で土人形を使って作ることを考えたのだ。
「凄いよ。レイ君。直ぐに防壁が出来るよ。」
キッコンが興奮して叫ぶが、レイはニコニコして一切返事をしない。
すると突然そのままレイは後ろにぶっ倒れた。トムが慌てて支えたが意識が無い。
「魔力切れだにゃ。」
タックとフクンがニヒルな笑みを浮かべている。
村人たちは魔法が使えなくて良かったと心から思った。




