3、再会を祝して
「そうですか。マールさんもキッコーリさんも亡くなりましたか。」
ポッタが酒をあおりながら悲しそうに言った。
「マールさんにはお世話になりましたからね。憎まれ口をたたく仲でしたが。」
「そうだったな。」
レイは昔を懐かしむ。
ポッタはマールからボッタクリ商人だと悪態をつかれていたが、悪人ではない。
誠実に基本に則って商売をしていたし、何よりもキッコーリ村ではポッタが自分の商売道具を提供しなかったら、オークの軍勢に負けていたかもしれない。
その上シュミム王国内での奴隷売買の時は大変世話になった。
レイにとっては恩人である。
「大領主たちも亡くなりましたか。アウド様は。」
ポッタは少し喉を詰まらせながら話を続けた。
「皆さんにとっては女狐・守銭奴でしょうが、私にとっては良い人でしたよ。店を開く際はお力を貸していただきました。」
おそらくポッタの言うことも事実なのだろう。
そうでなければアウドの町は発展していないはずだ。
人によって立場によって、悪人にも善人にもなる人は多い。
アウドたちにとっては、レイは悪人なのであろう。
「しかし、タダで泊って良いのか。」
「良いですよ。お客様用の布団も無いような所です。お金をもらうなんてとんでもない。」
レイたちが今いる所は、トホス王国の城だ。
城といっても土と木で出来た粗末な作りの大きな家で、そこに国民全員で住んでいる。
一応国民の暮らす部屋は個室となっており離れもあるのだが、風呂は無く、外で食事を作っている。
見かねたレイが土魔法で台所と風呂場を作ると、国王以下全国民から感謝されてしまった。
全国民といっても50人ほどしかいない。
明日の朝、城全体を補強しようと思っている。
「でレイさんたちはこんな辺鄙なところに何故。」
ガラガラ声で上機嫌な国王が尋ねた。
酒を飲むのは久しぶりだという。
「そうですね。皆ここ通りませんしね。」
ムカウも不思議そうだ。
レイは返事に困りザムを見た。
この国に来ることを決めたのはザムだ。
ザムは持っていた皿を床に置くと、ポッタたちに言った。
「禁足地に行く。」
「正気ですか!」
驚いた国王が立ち上がり、周囲が騒然となった。




