1、永遠のレベル1
レイたちの乗る乗合馬車は軽快に進んでいる。
以前アッカディー王国からギルガ神聖国に行った時も思ったが、王国内の旅は快適だ。
町から町へ乗合馬車が出ており、歩かずに旅をすることが出来る。
夕方前に次の町に着くため、野宿をする必要も無い。
傍から見ればBランク冒険者のレイとその奴隷2人、従魔3匹、Eランク冒険者3人という奇妙な組み合わせの集団だ。
冒険者ギルドに寄ると不思議がられるため立ち寄ることなく、各町の従魔も泊まれる宿を利用しながら東へと進んでいく。
乗合馬車に乗っている間は暇で仕方ない。
取り留めのない話をすることが多いが、ある時ふと話が途切れてしまった。
ショウダイたち3人は内輪の話を始めた。
同時期に召喚されたため仲が良いのだろう。
3匹はレイの周りでスヤスヤと寝ている。
他に客はおらず、御者は前方で華麗な手綱さばきをしていた。
何故かその隣でジャミが御者と話をしている。
結構話が弾んでいるようだ。
ザムとレイは向かい合わせに座っていて、必然的に2人で会話することになった。
何を話そうかと話題を探していたレイは、ふと疑問に思っていたことを口にした。
「なあ、ザム。」
「何だ。」
「レベル聞いていいか。」
「聞いてどうする。お前のスキルで分かるだろ。」
「分かるんだが、本当か。」
「本当だ。スライム1匹倒したことは無い。」
「マジか。」
レイのスキル『真実の目』で、ザムが『白く』職業が『復讐者』だと分かった。
スキルは分からなかったが、レベルが1と表示されていることに驚いた。
本人曰くそれは本当で、スライム1匹倒したことはないらしい。
「じゃあ、何で力が互角だったんだ?」
トムのレベルは200を超えている。
魔族2人を倒し、数十匹のドラゴンをほぼ毎日狩っている。
今では一瞬でブラックドラゴンを倒せるほどだ。
力ではレイを超えるトムのハルバードを、ザムは片手剣で防いでいた。
レベル1がレベル200の攻撃を防ぐことは本来あり得ない。
そんなレイの疑問が分かったようだが、ザムの口は重い。
「ああ。あれは俺のスキルだが言いたくない。」
「そうか。」
「まあ、今はお前の奴隷だからな。命令されりゃ言うさ。」
「いや、いい。」
奴隷であろうと無理やり口をこじ開けるような真似はレイには出来ない。
いつかザムが教えてくれるのを待つことにしよう。
そう言い聞かせてレイは窓の外を見る。
アッカディー王国内を旅しながら2週間、東の国境まで来た。
特に魔物に遭遇することなく危険な目に合うことも無かった。
快適な旅はここで終わりだ。
アッカディー王国からダンジョンが数多くある小国群へと行くかと思っていたが、ザムは大陸北東の国トホス王国に行くという。
「ここからは危険になるだろう。気を引き締めて行くぞ。」
ザムの言葉にレイたちは力強く頷いた。




