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復讐者  作者: 安慶
もう1人の復讐者
285/421

17、妊娠

3日間、レイは精力的に動いていた。

タリカやロック、ライルたちに旅に出ることを伝え、タリカの求めに応じて砦と行き来できる魔法陣を作っていく。

念のためにとレイの家の地下にも1つ魔法陣を作った。

旅先からすぐに帰ってこられるようにするためだ。

旅に持っていくものを準備しながら、連れていく仲間を決めた。

ザムは誰でも良いと言ったが、レイと3人の勇者の他、タックとフクンとアレス、ジャミも連れていくことにした。

「俺かよお。」

相変わらずジャミが不満を漏らす。

「仕方ないだろ。前衛と魔法使える奴は足りてる。斥候が足りないんだ。」

「誰が奴隷で斥候の奴教育すんだよ。」

「もうお前が教育しなくても大丈夫だろ。他の斥候も育ってんだよ。主人の命令だろ。行け。」

隣で聞いていたスミスが小突いている。

「スミスすまん。」

「良いってことよ。でもマッチョたちには主人からよ~く言って聞かせてくれ。暴れたら魔族の比じゃない。」

「ああ。」

 マッチョリザードホーズたちは、主人であるレイを乗せることに命を懸けている。

今回の旅にも連れて行こうとしたが、ザムから「目立ちたくない。」と拒否されたため連れて行かないことになった。

暴れたり無理やり付いてくるのを防ぐため、レイが説得する。

「グルアアアアアガア。」

「グアッゴオ。」

「ゴイゴイオオ。」

目に涙を溜めながらマッチョたちは訴えているが、旅から戻ったら思う存分遊ぶことを約束して納得してもらう。

 もう1人納得してもらう相手がいた。

トムだ。

そもそも魔族領に行くことを反対しているトムを、時間をかけて説得することにする。

「そりゃ納得出来ませんよ。行くことも。自分を連れて行かないことも。」

「すまない。でもハリナを1人にしておけないだろ。」

「ハリナ?」

「お腹の赤ちゃんのこと考えるとな。父親が近くにいる方が良いだろ。」

トムの顔がみるみる赤くなった。

「何で分かったんすか。」

「そろそろお腹目立ってきてるぞ。」

「ふぐっ。」

「ダンジョン連れまわすのもそろそろ止めろよ。あと後のことよろしく。」

「もうっ。」

赤い顔のトムふくれっ面になる。

レイは思わず笑ってしまった。

赤くなった茹でジャガイモのようなトムは1つの疑問を口にした。

「多分ですけど、行くって決めたってことはザムは『白い』奴だったんすね。」

「そうだな。俺のスキルでそう見えた。」

「でも、行くって決めたのはそれだけですか。」

「ではないな。」

「あと、フクンがレイと『同じ』って。」

「あいつは俺と同じ『復讐者』だ。」

「えっ。」

今度は真顔になったトムに苦笑いしながらレイは話を続ける。

「スキルまでは分からなかったが。職業『復讐者』は俺一人だと思ってた。」

「大丈夫っすか、それ。人間たちへの復讐だったら。」

「『白い』奴で俺たちに殺意は無い。誰か復讐相手がいると思っていい。」

「誰っすかね、それ。」

「『この世の真実』が分かったら、そいつが分かるかもな。」

「真実って何ですかね。」

「話を聞いても信じてもらえない。この目で見ないといけないものか。」

レイは拳を握りしめた。

トムがその拳を見つめている。

「何か引っかかるんだ。何か。俺が今まで見たもの、経験したもので。喉につっかかってる感じがして。」

トムは無言で話を聞いている。

「行かなきゃいけないって思うんだ。何か大切なことを見逃している。だから行く。」

トムは黙ってレイを見た。

レイは力強く頷いた。

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