16、3厄災
「良かった。ありがとう。」
ザムはホッとしたようだ。
椅子に深く腰掛けなおしている。
「レイさん!早まらないで!」
トムはレイの意外な答えと行動に焦っているようだ。
「トム。聞いてくれ。」
レイは静かに話し出した。
「このままずっと戦い続けるのか。今は良い。俺たち若いから。でも年取ったら。次の世代に強い奴がいなかったら。」
「でも。」
「どこかで変えなきゃいけないんだ。今がその時かもしれない。」
レイはトムを無理やり説得しようとしていた。
トムが不満そうなのを見ると、諦めてザムの方を向く。
「3日ほど時間くれるか。いきなりだと騒ぎになるかもしれん。」
「良いが、3日だけだ。出来るだけ急ぎたい。」
「分かった。あとトムが不満そうだからな。お言葉に甘えて奴隷にして良いか。」
「良いぞ。それで来てくれんなら。」
レイはハリナに奴隷紋の準備をするように言う。
ハリナがあたふたと出ていった後ザムを見ると、アレスの腹をワシワシしていた。
「すまない。腹出してたからつい。」
「まあ、良いが。」
「フェンリルか。ここまで人間に懐くのは凄いな。」
「そうか。生まれた時から一緒だからかな。」
「3厄災の1柱だぞ。」
「3厄災?」
3厄災とは初めて聞く言葉だ。
レイが怪訝そうな表情をしているのを見て、ザムは言葉を続ける。
「フェンリル、キングリッチ、グレイトドラゴン。フェンリルは物理攻撃特化で魔法攻撃が効かず、キングリッチは魔法攻撃特化で物理攻撃が効かない。」
「グレイトドラゴンは?」
「最悪だ。どちらもほとんど効かない。」
「ブラックドラゴンよりか。」
「あんなもんの比ではない。」
「マジか。」
「この3厄災は1匹で大国を滅ぼすことが出来る。会ったら最後死ぬだけだ。」
「そうか。気を付けよう。」
「吞気だな。」
「すがた形が知れてるってことは逃げ切れた奴がいるんだろ。死なないこともあると。」
「そうだな。そう考えたことは無かったな。」
「だろ。」
周りの人間の緊張感をよそに、2人は顔を見合わせて笑った。




