13、勇者を探す男
レイは男をしばらく見つめていた。
警戒からか背中に汗をかき始めている。
「何で勇者を探してるんだ。」
「伝えたいことがある。」
「言伝ではダメなのか。」
「直接言いたいんだ。頼みがある。」
「そうか。」
レイは少し考えたのち、男に伝える。
「食事を終えたら近くにある俺たちの詰所に来てくれ。勇者を紹介する。」
「分かった。ありがとう。」
男は笑顔で返事をすると、丁度運ばれてきた焼き立てのパンにかぶりついた。
パンの間には肉とチーズが挟まれている。
この世界でチーズは高級品だが、お詫びの意味も込めてアカニが用意したようだ。
男を食堂に残してレイは足早に詰所に向かう。
腰に付けていた通信袋を取り出し、ダンジョンに潜っているトムに直ぐ戻ってくるように伝える。
「うなあ。」
「にゃ。」
「わっふん。」
レイがトムを待っていると、足元にタックとフクンとアレスがスリスリしてきた。
3匹の頭を交互に撫でながらトムを待つ。
しばらくすると汗をかいたトムがハリナやショウダイたちを引き連れてやって来た。
「すいません。お待たせしました。」
「こっちこそゴメン。急に呼んで。」
「何かあったんですか。」
レイはトムに古い金を持った男が自分を訪ねて来たことを伝えた。
「マズいんじゃないっすかね。会うの。」
「やっぱりそう思うか。」
「だって用件言わないって変じゃないですか。」
「だよな。でももう会っちゃったしな。」
「名乗んなきゃいいっすよ。そうした方がいいっすよ。」
トムの言葉にやはり会うのは止めるかどうかとレイが迷っていると、丁度噂の男が詰所に来た。
「食事美味しかった。ありがとう。」
男がニッコリと笑う。
レイは男に椅子を勧めると、自分はその斜め前に座った。
トムも隣に椅子を持って来て座る。
「で、勇者を紹介してくれるか。」
「そうだな。…俺なんだが。」
男はレイをジロジロと値踏みをするように眺める。
「そうか。珍しい黒目・黒髪。そうか。他とは違う装備。」
何か納得をしている。
レイは男の視線にソワソワしながら剣に手をかけると男に尋ねた。
「で。魔族がこんなところまで何の用だ。」




