10、解放と決意
「良いぞ。」
「判断早いだろ。」
ロックが奴隷からの解放を懇願したことに対して、レイは即答した。
「元々ロックウッドを奴隷にするなんてって思ってたからな。遅くなって悪い。」
「いや。良いんだけど。何かこう…もうちょっとやり取りがあって。」
何故かモゴモゴ言っているロックの奴隷紋に魔力を流し、レイは解放した。
その後他の4人も解放していく。
「余韻とか無いな。」
「無いな。」
ロックが苦笑いしている。
ロックウッドを奴隷にしたのは、他の所で犯罪奴隷の身分に落とされるよりは安全だと思ったからだ。
実際には魔族の襲撃によって、危険な目に合わせてしまっていたが。
ロックたちは奴隷紋のあった首筋をさすりながら、腕を回したりしている。
「力が抜けた感じがするが。レイの恩恵が無くなったからか。」
「魔法も前みたいに色々撃てなくなってるかも。」
「そうですね。魔力が少なくなった感じがします。」
「どうしますかな。」
「あたしはあんま変わんない。」
ミナ以外は奴隷だった時と比べて弱くなったと感じているようだ。
「だが。レイの奴隷じゃなくても魔族に勝てるくらい俺たちは強くなる。」
ロックが力強く言い、ゴザたちが頷く。
修繕の指揮をしているタリカの所に戻り、ロックたちを解放したことを報告する。
「そうだった。ロックたちレイの奴隷だったな。」
タリカは忘れていたらしい。
「レイ。あとここが修繕出来たら地下室に転移の魔法陣作ってくれ。しばらくは砦と行き来しないといけないからな。」
「分かった。ここに泊まるか。」
「さすがにな。もうそろそろ戻るか。」
「ああ。」
夕方、作業を終えて砦に戻ると、ハリナが近づいてきた。
「レイ様、時間がかかり申し訳ありません。避難民の帰還及び奴隷たちの再配置が完了しました。」
「ありがとう。家に戻って休んでくれ。」
「はい。それでショウ様たちも戻ってきていますが。」
見るとハリナの後ろにギルガ神聖国から逃げてきた3人の勇者、ショウダイ・アサミ・ユウナがいる。
魔族戦のイザコザで、3人のことをすっかり忘れていた。
3人はレイたちの家にと言おうとしたところ、後ろをタリカが通りかかった。
「ん?」
タリカが3人を凝視する。
タリカは鑑定出来るスキルを持っている。
ショウダイたちを鑑定されてはマズい。
「どうした?タリカ。」
「その3人は。」
「先ほど魔族討伐に参加しようと到着した冒険者だ。今日は一泊してもらって帰ってもらおうと思う。」
「そうか。」
3人を見せまいと立ち塞がったレイの隙間からタリカがチラチラと見ている。
「じゃあ、また明日。」
「…ああ。」
レイはショウダイたちを引き連れて足早に砦を出る。
家に帰るとトムに3人の身分がタリカにバレたかもしれないことを伝えた。
「マズいっすね。」
さすがにトムも難しい顔をしている。
ショウダイたちはその様子を見て、すっかり萎縮してしまった。
「すいません。自分たち気が緩んでました。」
「いずれはバレてただろうから、あんまり気に病むな。」
レイは3人を慰めて連れ立って食堂へと向かう。
「おかえりにゃ。」
「にゃっふ。」
「フオオン。」
タックとフクンとアレスが美味しそうに肉を食べている。
レイはにこやかな顔で席に着き、食事を待っている間3人をどうするかを思案していた。




