6、ライバの最期
ライバの脚が無かった。
陽炎のように揺らめいていて、人間の脚では無い。
その姿を一目見たレイたちは後退し、武器を構えなおした。
「みっ皆さん、落ち着いて。」
ライバが慌てている。
慌てるライバに切りかかろうとした瞬間、1人の男が両手を広げてライバの前に立ち塞がった。
「止めてください。切らないでください。この方は命の恩人なんです。」
「あんたは。」
男の姿を見た瞬間、ミナが何かに気が付いたかのように驚く。
「あなた。あの時はありがとうございました。おかげさまで助かって。」
「どういうことだ、ミナ。説明してくれ。」
剣をライバに向けながら、タリカはミナに尋ねた。
「うん。ジャミと偵察に行った時…。」
ミナがジャミと魔族の戦力を調べに王都に向かっている途中、何組かの旅人に出会った。
魔族が進軍していることを伝えたが、タリカの砦まで避難するには距離がありすぎる。
たどり着く前に追いつかれるだろうと魔族たちの進路から逸れ、ライバ領まで逃げるように忠告した。
その時の旅人が今、ミナの目の前にいる。
「無事だったんだね!良かった。」
ミナはホッとした表情になった。
「おかげさまで。途中ドラゴンに襲われそうになったんですが、ライバ様に助けていただきました。」
「実は私も。」
「俺もそうなんだ。」
ミナが同調する声に気が付いて食堂を見回すと、以前見たことのある顔がチラホラある。
ミナとジャミがライバ領に逃げろと忠告した旅人たちだ。
「お助けして、皆でここに避難したんですよ。」
ライバは戦闘の意思が無いことを示すかのように両手を上げてニコニコしている。
「で、ライバさんはどうしてそんな姿に。」
ニコニコしているライバにすっかり戦う気の失せたレイが尋ねた。
一気にライバの表情が暗くなる。
「あの、憎き魔族ですよ。マオハリと名乗ってました。」
「マオハリ…。」
レイが奇襲をかけてかろうじて倒した魔族だ。
ライバは王都を訪れた際、国王からマオハリを紹介された。
魔族と手を組むことを拒否したライバはが帰ろうとしたところ、マオハリに襲われて殺されたという。
「ライバは魔力が高くて強いからな。狙われたんだろう。」
タリカがマオハリの目的を推測する。
「そうですね。自分の配下にしたかったようです。なので隙をついて逃げました。」
マオハリから逃げたライバは途中で襲われている旅人たちを見つけて助けたらしい。
それだけではなく各地を飛び回り生き残っている人がいないか探していたそうだ。
「魔力が高いからですか。リッチとなってるようですね。」
サクソウが眼鏡をずり上げながらライバを観察している。
「どうやらそのようです。死んですぐ魔物になっちゃいましたね。知性が残ったのは良かったですが。」
ライバは優しく微笑んでレイに近づいた。
思わず警戒するレイに対してライバは言った。
「レイさんにお願いがありまして。」
「何か。」
「私を従魔にして下さい。」




