5、ライバの町の今
王都でローミを殺した翌日、レイは自宅地下にあるライバ領近くの魔法陣を起動した。
ライバの町は魔族たちの進行方向から大きく外れており、キングウルフも近くに住んでいるため、シュミム王国の中では比較的安全だろうという判断からだ。
レイとタリカ・ロックウッドのメンバーは、魔法陣からキングウルフたちの住む場所へと移動する。
「またお前たちか。せわしないな。」
迷惑そうなキングウルフに声をかける。
「すいません、キングウルフさん。こっちにドラゴンや魔族来ました?」
「そんな汚らわしいものは来てないな。だが町に行くなら気を付けろ。」
「何かあったのか?」
「人がいる。あと何やら魔物もな。」
「何!」
「あの気配は魔物だ。だが変な感じだ、何故か前に会ったことのあるような。」
何かを思い出そうとするキングウルフに急いで挨拶し、レイたちはライバの町へと向かう。
「魔族と人が町にいるのか。」
走りながらロックがレイに尋ねた。
「そうらしい。殺される前に助け出さないと。」
「ちょ…ちょっと待…速…。」
タリカの息が既に上がっているがレイたちはライバの町へと一目散に走った。
町にいるという、魔物は何なのか。
町にいる人は無事なのか。
ライバの町の巨大な防壁を回り込み、アウドの町側にある門から中に入ろうとした。
「うわっ。開かない。」
門は固く閉ざされており開かない。
「任せて。あたしが反対側から開ける。」
ミナは一気に跳躍すると、防壁を越えて町に入った。
しばらく待っていると門の内側からガスッという音がして開き、ミナが顔を覗かせた。
「早く行こう。たぶん魔物も人もライバの屋敷にいる。」
「急ぐぞ。」
ロックの掛け声に再びレイたちは走り出した。
「もう…無理…。」
ヘロヘロになったタリカをゴザがおんぶしてライバの屋敷へと急ぐ。
魔族たちが襲って来なかったためか、町の中は以前と変わらず綺麗なままだ。
レイたちはライバの屋敷にたどり着くと、武器を構え警戒する。
「離れるな。どんな魔物がいるか分からん。」
ロックの言葉に全員が頷き、レイたちは屋敷へと静かに入っていった。
「食堂から声が聞こえる。」
ミナが気配を探り、音を立てずにレイたちは食堂へと向かう。
「開けたら両側に飛び退け。待ち伏せされてるかもしれん。」
ロックとゴザが扉を開け、全員扉の左右に飛び退く。
だが何かの攻撃を仕掛けられそうな気配はない。
「魔物1匹、中央。」
ミナが小声で状況を伝え、レイとロックウッドのメンバーは、ロックの合図で食堂になだれ込んだ。
「おお!皆さん無事でしたか。お会いしたかったです。」
懐かしい声。
懐かしい顔。
「ライバ!無事だったか!」
喜びにあふれるレイたちはライバへと近づく。
だが、ライバの脚は無かった。




