2、キッコーリ町の今
「すま~ん。あんま役に立たなかった。」
「ね~。」
「でもレイたちに会えて良かった~。」
「魔族に勝ってたし。」
セイクルズのメンバーとレイは握手して別れを惜しんだ。
セイクルズはタリカの命により砦を警戒する役目だったが、現在拠点にしている東の小国から名指しで緊急の要請が入ってしまったのだ。
急いで戻るということで、慌ただしく出発の準備をしている。
「こっち来たら呼んで~。歓迎するよ~。」
相変わらず戦闘以外ではダラけた雰囲気のセイクルズと別れ、レイは砦に戻って自分も出発の準備をする。
レイの従魔であるマッチョリザードホーズが鼻息荒く、出発を待っていた。
魔法陣を使えばシュミム王国の王都まですぐだが、どこに魔族の生き残りがいるか分からない。
馬車で途中の町の様子を確認しつつ、王都を目指すことになった。
「ミナ、行くのか?」
心配したレイがミナに声をかける。
「うん。動いてた方が気分晴れるし。」
まだ顔が腫れているミナが元気なく答えた。
ジャミと交代してミナも含めたロックウッドがタリカに同行する。
「じゃあ行ってくる。」
「タリカ様。」
心配そうにジャイルが言う。
「ジャイルも、魔族に気を付けろ。」
「はい。セイクルズが抜けたのは痛いですが、警戒体制は既に整えています。」
「さすがだ。じゃあ行ってくる。」
「はい。お気をつけて。」
深々と頭を下げるジャイルに見送られてレイたちはシュミム王国の王都を目指した。
馬車は軽快に走っているが、レイたちの心は晴れない。
途中にある町は完全に破壊されていて、生存者は1人もいなかった。
「まあ、生活苦しかったし魔族来るしで1人残らず避難したからな。魔族たちが腹いせに壊したんだろう。」
ため息交じりにタリカが言う。
人がいなかったことにレイはホッとしたが、次のロックの言葉に表情が暗くなった。
「ただ王都に残った奴はいるからな。」
「いるのか。」
「奴隷商人やらの商人が何人か。あと王侯貴族がな。」
アウドの町の惨状から見ても、王都で生き残った者は皆無だろう。
それでもとレイたちは西に向かって馬車を走らせる。
砦を出発してから1週間後、レイたちはキッコーリの町の残骸にたどり着いた。
レイがタックとフクンと協力しながら作った町は、巨大なクレーターのように中心部が大きく窪み、町があった形跡がほとんど残っていなかった。
「凄いな。爆発か。」
「おそらく。キッコーリさんが。」
レイとロックは無言で立ち尽くした。
オークの軍勢の猛攻にも耐えた防壁は、キッコーリが持っていた魔法のおたまの大爆発で吹き飛んだ。
これほどの威力に巻き込まれたら、魔族もひとたまりもないだろう。
レイたちはキッコーリの町を後にして、次は王都に向かった。




