27.無詠唱修行
昼休憩を終えた後、2人と2匹は切り倒された木が運び出された後の場所に来ていた。
事前に土魔法が使えるかフクンに聞かれ使えると答えたところ、
「ふふっ。」「修行にゃ。」
と不敵な笑みを浮かべた2匹に言われた。
残った切り株を前に、
「これ掘り返さないと、また生えてくるにゃ。」
「そうだね。」
「魔法で掘り返してみるにゃ。」
「分かった。」
レイは答え、詠唱を唱え始めた。
「大地の精霊よ。我に力を与えよ。我が手の内に力を宿せ。悪しき存在を倒す大地となれ。ガイアーーーーカアーーン。」
「長ーーい。」
タックに猫パンチされた。
「いつまで言ってるにゃ。もし戦ってたら言ってる間に殴られるにゃ。」
「そうだけど。」
「見とくにゃ。」
のしっとタックが切り株の前に立ち、
「にゃ。」
と短く鳴くと、根っこから切り株が持ち上がった。
「すごい。」
「何ですか。その力。」
レイとトムは驚愕しタックを見る。
「にゃにゃ。」
とタックは得意げに笑い、続けて
「フクンもやってみるにゃ。」
「にゃん。」
フクンが鳴くと、前にある切り株2つが根から持ち上がる。
『うそーーん。』
目ん玉が飛び出そうなほどに見開きながら、2人は同時に叫んだ。
「頭ン中にどの魔法を使って、どうなってほしいか、それを見たみたいに思うにゃ。」
「やってみるにゃ。」
2匹に促され、レイは再び切り株の前に立つ。トムも固唾をのんで見守っている。
一旦詠唱のことは忘れよう。無詠唱は出来ないと思っていたが、実際に2匹の魔法を見ると信じない訳にはいかない。
レイは深呼吸をした後、手に魔力を込め、
「ガイア!」
短く叫ぶと同時に、頭の中に写真のように切り株が根元から持ち上がる光景を思い浮かべた。
ボコッという音と共に、目の前の切り株が根元から少し持ち上がった。タックとフクンほどではないが、掘り出しやすいくらいまで切り株が浮き上がっている。
「はあ。ちょっと出来た。」
「人間のくせにお前やるにゃ。」
タックは胸を張って「師匠が天才だからにゃあ。」と自画自賛し、「そうだにゃあ。」とフクンが相槌をうっている。
その後、30本程切り株を浮かせたところで、レイは突然目の前が真っ暗になり立っていられなくなった。しりもちをついて呆然としている。
「魔力切れだにゃ。今日は休むにゃ。」
「もう疲れたにゃ。」
2匹に促され、レイとトムは作業を切り上げることにした。
レイが浮かせた切り株を完全に掘り出すようキッコンにお願いし、2匹をおんぶして家に帰った。
『にーーーく。にーーーく。』
タックとフクンはレイとトムの背中で騒いでいた。




