41、86人の名誉
砦の向こう側、タリカの町も凄惨な光景が広がっていた。
戦いで命を落とした者たちが地面に並べられ、火葬を待っている。
ドインの部下・奴隷はほとんど全てが亡くなったらしい。
700名ほどのドインの部下や奴隷で生き残ったのは、ローミの町に派遣されていた部下を含め11名だけだ。
戦争直前に無理やり奴隷にした者たちもレベルを上げ、装備を整えて参戦していたらしい。
そして。
100名を超えるお達者魔法部隊で生き残ったのは32名だ。
86名がブラックドラゴンの攻撃で亡くなってしまった。
ドラゴンのブレスで焼きただれ、体の一部が欠損している者もいる。
「ごめん。みんな。ごめん。」
地面にうずくまるレイに、マールが声をかけた。
「若い方の魔法部隊は死んでないんだ。彼らの望み通り。」
レイの横にいつの間にかトムも座っている。
トムはレイの肩に手を乗せた。
「弔ってあげましょう。このままじゃ彼らも安らかに旅立てません。」
レイの側に4人組が近づいてきた。
「レイ、申し訳ない。俺ら遅かった。」
懐かしい声だ。
いつもの飄々とした声が、今は沈んでいる。
「セイン。」
レイの側にセイクルズのメンバーが近づいてきた。
会うのは8カ月ぶりだろうか。
トムがレイの顔を覗き込む。
「セイクルズの皆さん、早馬使って小国群から来たそうです。」
通常なら2か月はかかる道のりを、早馬を乗り継いで20日で来た。
早馬が使えないところは走って移動したという。
「ありがとう。来てくれて。」
再会に少しほっとしたレイに、セインは首を振る。
「魔族戦に間に合わなかった。すまない。」
「それでも。誰よりも早く来てくれた。」
「おうよ。レイには世話になったからな。」
いつもの飄々とした態度になったセインだったが、また真面目な表情になる。
「その。言いにくいんだが。キミイとジョナに火葬任せて良いか。俺たちに出来るのはそれくらいしかない。」
「頼む。」
僧侶のキミイが祈りの言葉を紡ぎ、魔法使いのジョナが火葬していく。
セインとクルンが骨を砕いて、小さな木箱に詰めていった。
その間、レイは火葬を待つ1人1人に声をかける。
「そうだ。赤ん坊が腕の中で死んじゃったんだよね。避難した子供たちは皆無事だよ。もうすぐここに帰ってくるよ。」
「ポーションが買えなくて息子さんが亡くなって。俺はこの町をそんな風にしない。」
「何とか魔族には勝った。これからも魔族倒すために強くなる。頑張るから見ててくれ。」
たどたどしく話続けていく。
そうしないと心が壊れそうだった。
日が少しずつ西へと傾いていく。




