39、ドインの死
「レイ!」
ジャイルが駆け寄って、レイをマオハリから引き剥がした。
「…とどめ…を。」
やっとの思いでレイが口を開いた。
「分かった。」
ジャイルはレイをそっと地面に下ろすと、マオハリに近づこうとする。
「…お前ら…だけでも…。」
マオハリの左手に握られた物を見て、ジャイルはレイを抱えて一目散に走り出した。
マオハリが魔力を込めると、黒い光が一気に左手からあふれ出す。
ドンという心臓に響く音と共にマオハリの体が四散し、肉片が飛び散る。
レイと共にジャイルの体が地面に打ち付けられ、2人は倒れたまま立ち上がらない。
「レイさん!ジャイルさん!」
トムたちが2人に駆け寄った。
「回復を。エリアヒール。」
少し遅れて駆けつけたサクソウが、ジャイルとレイに回復魔法をかける。
2人の血は止まったが、ジャイルは背中から尻にかけて鎧が砕かれ肉がえぐられていた。
左足の膝下はちぎれている。
最後の力を振り絞って逃げたジャイルは痛みからか気を失っていた。
かろうじて息はあるようだ。
「ジャイルさん。」
ジャイルの怪我を見て、トムが言葉を詰まらせる。
「ジャイルは後でレイに回復かけてもらえ。それよりドインを。」
ロックはヨロヨロと立ち上がり、足を引きずるようにドインの所に行こうとする。
ゴザが体を支え、トムがオーガだった肉塊をどかしながら進んでいく。
「うっ。」
たどり着いた先には、大の字で倒れているドインがいた。
既に息は無い。
体の半分が無い。
もう流れ出るほどの量が無いのか既に血は止まっていて、地面に黒いシミが広がっていた。
「あ…ああ。」
ロックが倒れこんだ。
そのままショックで気を失う。
ロックを介抱しているゴザを残し、トムはドインに近づいた。
目が見開かれ、槍は力強く握りしめられている。
「ドインさん。…ありがとうございました。あなたが。いなければ。」
トムはドインの顔にそっと手をかざし、ドインの瞼を下ろす。
「父ちゃん!父ちゃん!」
絶叫に近い声が聞こえてきた。
ミナだ。
ミナはドインの姿を見つけると、号泣しながらドインの側で倒れこんだ。




