36、総力戦
『うおおおおおお。』
ドインの部下や奴隷とレイの奴隷たちで構成する先陣がオーガ目掛けて飛び出していく。
上空を飛ぶ無数のドラゴンが飛び出してきた近接部隊にブレスを放とうとした。
「させないっ。」
レシーアの号令でお達者魔法部隊がドラゴンに一斉に魔法を放った。
それぞれ得意とする魔法がドラゴンたちに直撃する。
致命傷を負ったドラゴンがオーガの頭上に降り注ぐ。
だが部隊渾身の魔法を食らってもブラックドラゴンには致命傷を与えられない。
ブラックドラゴンたちは砦上部の魔法部隊に気が付くと、砦に向けて一気にブレスを放った。
『ライトウォール。』
タックとフクンがブレスを防ぐため2重に光の防壁を張った。
ブレスを抑え込んだように見えた光の防壁は、3秒もするとメキメキと音を立てて崩れ始める。
それを見たブラックドラゴンは再びブレスを放とうとした。
「ライトウォール。」
レシーアが急いで防壁を張るが一瞬で崩れ、ブレスが魔法部隊に直撃する。
サクソウが範囲回復魔法で回復を試みるが、何人かピクリとも動かない。
「タック、フクン、攻撃に回って。」
「わかったにゃ。」
「にゃん。」
タックとフクンから、
『アイロス。』
最上級の風魔法が放たれる。
さすがに最上級の魔法には負けるのか、先ほどの攻撃でダメージがあったからなのか、ブラックドラゴンが次々と撃ち落とされ、錐もみしながらオーガの頭上へと落ちていった。
「レイ、左。ゴザ、右。ロック真ん中の小さい奴。俺は奥に行く。」
ドインの短い指示を聞き、5人と1匹は飛び出していった。
目の前のオーガを巧みに回避しながら後方に下がった魔族たちへと突進していく。
ドッという重い音と共に、レイは左側で槍を構えていた魔族と対峙した。
高速レイの剣と魔族の槍が交差していく。
「ギッ。」
魔族が短い悲鳴を上げた。
アレスが魔族の足に噛みついたからだ。
アレスを振り払おうと槍を突き出すが、アレスはひらりと攻撃をかわす。
気を取られている魔族にレイの剣が迫る。
「ッグ。」
槍の柄でレイの剣を止めたが、背後に回ったアレスの爪が背中に食い込んだ。
背中の傷みで前のめりになった魔族の顔に、レイが袈裟切りする。
片目を切られた魔族は手で押さえながら後退しようとした。
その隙を逃さずアレスが回転しながら首に爪撃を食らわせる。
衝撃でくの字になった魔族の首にレイが剣を突き刺しながら力を込めた。
体から頭部が一気に切り離され、魔族の体がゆっくりと後ろに倒れる。
「アレス、行くぞ。」
「ガウ。」
レイとアレスはトムたちに所へと駆け寄るが、既にトムたちは魔族を倒していた。
「ナイス。」
「レイさんも。」
レイ・トム・ゴザ・アレスは合流して、ロックの元に駆けて行く。
「おう。ちょうど倒したところだ。」
ズタズタになった魔族の体から頭部を切り離したロックが言った。
「ドインの所へ。」
「ああ。」
4人と1匹で更に後方で戦っているドインに加勢しようと走り出した。
その時、前方から男の絶叫が聞こえてきた。




