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復讐者  作者: 安慶
人魔戦争
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34、ドインとロック

 皆が慌ただしく戦闘の準備をする中、ドインは目の前に座る若者を見ていた。

ドインは40歳近く、体のあちこちにガタが来ている。

夜休んでも、体の芯から疲れが抜けきらない。

それに比べて目の前の若者は、旅慣れているせいかとても元気だ。

今も仲間と談笑しながら準備をしている。

 ドインとロックの出会いは7年ほど前のことだ。

また声変わりもしていない少年が、ドインの要塞に突然来た。

「俺も魔族と戦う。」

ロックと名乗る少年は言った。

部下たちが追い返そうとしても、頑として動かない。

あまりにもしつこいため、ドインは魔族と戦う様子をロックに見せることにした。

 ほとんどの人間が魔族の姿を見た瞬間、腰を抜かすか気絶してしまう。

その位殺気と異常な魔力が溢れているのだ。

ロックもそうなるだろうとドインは思っていた。

「見てろ。目を逸らすな。」

 ドインはロックに言いつけ、魔族との戦いに繰り出していった。

何とか打ち勝って帰ってくる。

ロック少年は戦いに出かける前と同じく、要塞の小窓から外の様子を見ていた。

「まあ、逃げ出さなかっただけ褒めてやる。」

ドインがロックの肩に手をかけると、ロック少年は後ろに倒れていった。

立ったまま気絶していたらしい。

ついでにお漏らしもしていた。

 ドインはロックが逃げ帰るだろうと思った。

ロックのように一旗揚げようと冒険者がやって来ることがある。

だが、魔族を見ると皆一目散に逃げていった。

多分に漏れずロックもそうなるだろうと思っていた。

 そんなドインの予想に反してロックは逃げなかった。

魔物を狩って少しずつ強くなった。

常に「魔族と戦えるほど強くなりたい。」と言っていた。

 出会いから2年が経ちロックが15歳になった時、ドインはパーティーを組むことを提案した。

自分の娘ミナの他、王都や各地でメンバーを募集してAランクになれと言った。

Aランクになったら魔族と戦わせてやると。

 ロックはドインの言う通り、ミナと連れ立って王都を目指した。

冒険者の両親が死んで天涯孤独だったゴザ。

貧民街の出身ながら独学で魔法を覚えたレシーア。

教会に勤めていたが、他の僧侶たちから浮いていたサクソウ。

 はみ出し者だった5人が集まって冒険者パーティー『ロックウッド』が結成された。

 出会いから7年経った今、立派なAランクの冒険者となったロックは、魔族との総力戦に挑もうと準備をしている。

ロックはリラックスしているように見えるが、ドインには常に神経が張り詰めているのが分かる。

「なあ。ロック。」

「何だ、ドイン。」

急に話しかけられて、キョトンとした顔のロックにドインは言った。

「俺に何かあったら、後は頼む。」

「冗談じゃない。不吉なこと言うな。」

 軽く睨むロックを見て、ドインは苦笑する。

立派になったものだと。

 あともう少しで魔族がこの砦に来るだろう。

タリカやジャイルの前では余裕を見せているが、実際どうなるかドインにも分からない。

「ただいまあ。」

「死ぬ。死ぬかと思った。」

偵察に行ったミナとジャミが戻って来た。

もうすぐ戦いが始まる。

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