26.魔法詠唱
とりあえずひっくり返った村人を全員立たせた後、正気を取り戻したキッコンから昼休憩を取れと言われた。既に必要な数の木を切り倒しているため、乾燥場まではレイとトム以外の村人で運んでいくという。
2人はタックとフクンを連れて、木こり亭へと足を運んだ。
「さっきのでかい音なんだい。何やったんだい。」
アアナが眉を吊り上げながら2人に聞いた。
「とりあえず必要な数の木を切り倒したんだ。」
「早いね。さすがだね。」
「この2匹がね。」
「猫ちゃんたちが全部切ったの?」
『うん。』
タックとフクンは自慢げに返事をする。
「お腹すいたにゃあ。」
「にゃあ。」
2匹がしっぽでペチペチとレイを叩くのを見て、アアナが
「すぐ用意しなきゃね。」
と言った。
「猫たちに一番上質の肉を頼む。」
「あいよ。あんたすぐ作るよ。」
夫に声をかけてアアナは厨房へと入っていった。
アアナたちが厨房に入るのを見届けると、レイは疑問を猫たちにぶつけた。
「なあ。さっきのやつ魔法を使ったんだよな。」
「あい。」
「詠唱どうしたんだ。」
「?」
猫たちは不思議そうな顔をしながらレイを見ている。
レイが読んだ本には、魔法を使うには詠唱が必要と書いてあった。
風魔法を使うには、
『風の精霊よ。我に力を与えよ。我が手の内に巻き起これ。悪しき存在を倒す風となれ。ウインドーーーー。』
と魔力を手に込めながら詠唱しなければならないと書いてあった。
カッターのように風魔法を使うにはさらに長い詠唱をしなければならない。
だが先ほどエル・キャットの使った魔法は『ウィンドカッター。』と呟くと同時に、巨木を何百本と切り倒す魔法が発生した。
「普通風魔法を使うのは難しいんだよ。」
「そうにゃの?」
フクンは訳が分からないという顔をしている。
「魔法はどこで覚えたんだい。」
「じいちゃんが頭の中で教えてくれる。」
タックが運ばれてきた肉にかぶりつきながら言った。続けて、
「長い言葉なんて必要ないにゃ。頭ん中にこんな風にしたいなって魔力込めながら思うと出るにゃ。にゃにゃ。」
「そうなのか。」
レイは感心して言ったが、トムは
「そんな話聞いたこと無いです。」
「そうなのか。」
「魔力を込めて詠唱が長ければ長いほど強い魔法になるって聞きました。」
「だから人間は弱いにゃ。肉食ったら教えてやるにゃ。」
タックとフクンは肉をムシャムシャと食べ、レイとトムはそれを黙って眺めていた。




