32、居残りマール
レイとロックはうなだれながら家に向かっている。
宿にいたBランク以上の23パーティーを確認したが、魔族と戦えるパーティーは1組もいなかった。
それどころかブラックドラゴンを倒せるのかも怪しい。
対オーガ戦として配置し、対魔族戦はドインたちメインで戦うことになった。
戦力は足りないがやるしかない。
レイはロックと別れて家に入る。
「レーイー。」
フクンがレイに抱き着いてきた。
タックは足元でスリスリしている。
「ただいま。タック。フクン。」
「ワフン。」
「アレス、ただいま。お留守番ありがとう。」
3匹の頭を交互に撫で、眠ろうと自分の部屋に向かった。
その時、奥の部屋からトムとマールが言い争う声が聞こえてきた。
トムがマールと喧嘩するのは珍しい。
気になったレイは、マールの自室へと入っていく。
トムが真っ赤な顔でレイの方に振り返った。
「どうした、2人とも。」
「あっレイさんも説得してください。婆ちゃんが避難しないって。」
「何?」
マールは明日の朝、ハリナに連れられて毒の森近くの宿に避難する予定だった。
だが、避難しないとゴネているらしい。
「マールさん、避難しないと。」
「ヤダね。決めたんだ。」
「何で。」
「孫が死にそうって時に、自分だけ逃げられるもんか。ここで待つよ。」
「でも。」
「でももクソもないさね。あんたが死んだら私が生きてる意味ないじゃないか。」
困ったレイはトムを見た。
トムも困り顔で首を振る。
「猫ちゃんたちとも話して決めたんだ。」
「タック?」
「レイたちと一緒に戦うにゃ。」
「フクン頑張る~。」
「ガウ。」
「そんな…危険だよ。」
レイはタックたちが戦うことを想定していなかった。
3匹とも強く、ブラックドラゴンとも戦ったこともあるが、今回は7人も魔族がいる。
オーガやドラゴンの数も多い。
出来ればマールと共に避難してほしい。
「すっごく痛いし、死んじゃうかもしれないんだよ。」
「怖いけど…レイが死んじゃう方が怖い。」
フクンがイカ耳になりながら答える。
「ほれ。にゃんこもワンコもお前たちと一緒にいたいんだよ。連れてってやってくれ。」
レイはトムと顔を見合わせた。
タックとフクンの魔法、アレスの近接攻撃が加われば確かに戦力が上がる。
だが、危険な目には合わせたくない。
トムは首を掻きながらレイに言った。
「取り敢えず、ドインさんとタリカさんに言いましょうや。判断任せましょ。」
「そうだな。タック・フクン・アレス、えらいオジサンたちに聞いてみるね。ダメって言われたらハリナさんに付いて行くんだよ。」
「分かった。」
「うん。」
「クン。」
素直に3匹が頷く。
レイは3匹と共に自分の部屋に戻り、つかの間の休息を取ることにした。




