30、お達者魔法部隊の覚悟
ミナとジャミが偵察に行った後、レイたちは一晩眠り、ドラゴンダンジョンへと潜った。
いつ魔族たちが襲ってくるか分からないため、各ダンジョンのボスを倒し、休眠期間にする。
同時に魔族戦への参加者も決めていく。
レイ・ドイン・ジャイルの3班に分かれ、ブラックドラゴンを倒せる者を選定する。
レイたちからは、ドイン領での魔族戦で戦った奴隷たちを中心に参加させる予定だ。
だがそんなレイの決定に異を唱える者たちがいた。
「わしらもドラゴン倒せるんじゃ。」
「そうじゃい。」
「何で参加させんの?多い方が良かろうも。」
「そうだそうだ!」
レイはお達者魔法部隊のメンバーに囲まれて、参加させろと迫られていた。
100名を超える高齢者の集まりは迫力がある。
「そうはいっても。最悪死にますよ。」
レイは後ずさりしながら、お達者魔法部隊の参加を断る。
するとリーダー格の老女が一歩前に出た。
「レイ様、ワシらにとって一番怖いことは何じゃと思います。」
「死ぬことじゃないの。」
老女はゆっくりと首を横に振った。
「ワシらにとって一番怖いことは、自分らより若いのが死ぬことなんじゃ。」
見ると他の者たちが一様に頷いている。
「レイ様の奴隷になる前は、そりゃヒドイ有様での。食べるもんも無いし、病気になってもポーション買えんかった。」
「無理して魔物討伐してケガして死んでいった村の若者がおった。優しい奴じゃった。」
「アタシの腕の中で生まれたばかりの赤ん坊が死んでの。どうすることも出来んかった。」
「ワシら無力だった。命を、若い命を救えんかった。」
思い当たることがあるのだろう。
中には泣き出す者もいた。
「だからお願いじゃ。ワシらも参加させてくれ。」
「この日のために魔法覚えたんだよ。お願いだよ。」
「もう若い者が死ぬのを見るのは嫌だ。」
「負けたらどうせ死ぬんだ。俺たちの命を使ってくれ。」
「良いんじゃないっすか。ドラゴン倒せるし。装備も揃ってるし。」
気が付くとトムが横に立っていた。
トムはお達者魔法部隊を参戦させることに賛成のようだ。
レイは諦めたようにホッと息を吐き、お達者魔法部隊のメンバーに言った。
「じゃあ、参戦してくれ。総力戦だ。覚悟は良いか。」
お達者魔法部隊から歓声が上がる。
「良いのかなあ。」
決定後も悩んでいるレイにトムが声をかける。
「良いと思いますよ。予備の魔法部隊を直ぐに参加できるようにしとけば良いじゃないっすか。」
「そうか。後でタリカに言っとく。」
「うっす。」
トムはジュースを飲みながらどこかに行ってしまった。
レイはお達者魔法部隊の参戦について報告するため、タリカがいる砦へと歩いて行った。




