28、偵察
ミナとジャミが高速で移動している。
2人ともレベルが100を超え、かなりのスピードが出ている。
魔族たちがどこで何をしているのか分からないため、転移魔法陣は使わない。
走っている最中、町にも入れず迷っている旅人を3組見つけた。
声をかけ、魔族が襲ってくることを伝える。
一様に真っ青になり助けてくれと請われたが、その余裕はミナたちには無かった。
また、いつ襲ってくるか分からないため北へと逃げるように伝え、ミナたちは西へと走り出す。
旅人たちは間違いなくタリカ領に着く前に追いつかれるだろう。
それならばライバ領へと逸れる方が、幾分か助かる可能性がある。
良心は痛むが追いすがる旅人たちと別れ、魔族たちがどこまで来ているかを確認するため再び移動を始めた。
5日間ほぼ休みなく走り続け、アウド領と王都直轄領の境まで来た。
「ストップ。」
小声でミナが指示を出す。
ミナに呼応するようにジャミは止まり、近くの茂みに身を隠した。
背筋が凍ったような感覚に襲われ、震えが止まらない。
ミナは大きくて尖った耳をピクピクさせて辺りを探っていた。
「多いね。」
ジャミも意識を集中させて王都直轄領を探る。
少なくとも7つ強力な魔力の塊が王都直轄領の中にある。
「だね。7つ。奴らかな。」
「多分ね。」
ミナは辺りを見回すと、1つの大木に目を付けた。
大きいだけではなくてっぺんまで葉がかなり生い茂っている。
2人はスルスルと木を登ると、ミナは魔法袋から小型の望遠鏡を取り出し王都の方角に向けた。
「うっ。」
「師匠、何が。」
ミナは黙って望遠鏡をジャミに渡す。
何を見たのかと訝しがるジャミの目に映ったのは、おびたたしい数のブラックドラゴンだ。
王都周辺の空を飛んでいるのだが、背中に何かがビッシリと乗っている。
ジャミが更に焦点を絞って見ると、どうやら背にオーガを乗せているらしい。
「マズイね。来るの早いかも。ドラゴンが他の魔物運んでちゃ。」
「戻りましょう。直ぐ。」
「ちょっと待って。ドラゴン数えるから。」
ミナがドラゴンを数え始めたとき、キッコーリ町の方角から凄まじい爆発音が聞こえてきた。




