25.エル・キャットの実力
「人間、おりたちがやったら旨いもんくれにゃ。」
ヒゲを撫でながらタックが言う。
「何を。」
「木を一気に切り倒すにゃ。」
「出来るのか。」
「ふふん。エル・キャット様をにゃめんにゃよ。」
「にゃめんにゃよ。」
フクンも兄の真似をしてフフンと笑う。
可愛いなあと思いながらレイが眺めていると、
2匹は作業をしていた村人全員に自分たちの後ろに来るように言った。
小さい黒猫2匹が自慢げに立っている所に、なんだなんだと村人たちが集まってくる。
全員が集まったことを確認した後、レイがやっても良いと合図した。
合図と同時に2匹は前足を突き出して、
『ウィンドカッター。』
と揃って叫ぶ。
その瞬間肉球から風が沸き上がり、村周辺の巨木を根元から一気に引き裂いていった。
見ると途中でカーブしながら、村周辺の巨木をなぎ倒していく。
あまりの光景に全員口をあんぐりさせながら見ていた。
「やったにゃ。」
「飯くれにゃ。」
村周辺の見晴らしが素晴らしく良くなった後、得意げな2匹がレイの所へと戻っていく。
2匹を肩に乗せながらレイが振り返ると、木の伐採に参加していた村人全員がひっくり返っていた。門の方から何か音がする。見ると、
「なんじゃああああい。今の音。」
と、おたまを持ちながら走ってくる村長の姿が見えた。




