20、再びの4大領主会談
ライバの気持ちは沈んでいる。
馬車の窓から王都の街並みを眺めているが、どこもかしこも空き家だらけだ。
城まで続く大通りにまで物乞いが溢れている。
そこかしこから怒号が聞こえ、異臭が漂っていた。
戦争前は表向きには王都としての威厳を保っていたが、今は貧民街のようで威厳も何もあったものではない。
大臣から人と物資を融通するように打診されている。
一応今日は魔法袋の中に食料などの必要物資を入れており、納めるつもりだ。
人については派遣するのを躊躇している。
王都のこの有様を見ると、安全が保障されそうにないからだ。
鬱々とした気持ちのライバを乗せた馬車は城内へと入っていく。
誰も出迎える者はいない。
馬車を降り、ライバは以前と同じ部屋へと入っていった。
既に3人の大領主は揃っている。
小声で最後になったことを詫び、ライバはドインの横に座った。
それを合図にするかのように王が大臣を従えて奥の扉から部屋に入ってくる。
身の回りの世話をする者がいないせいか、薄汚れていた。
王はわざとらしく咳をすると、大領主たちを見回し上座へと腰を下ろす。
「敗戦の責任をどう取る?」
回りくどいことが苦手なドインが聞いた。
だが王はそれに答えることなく口を開いた。
「おほん。今の苦しい状況を脱するため、我が国は同盟を結ぶことにした。紹介しよう。新たな同盟国からの賓客マオハリ殿だ。」
奥の扉から1人の男が入って来た。
青黒い肌の男を見た瞬間、ドインが目の前にある机を拳で叩いた。
重厚で大きな机は真っ二つに割れてしまった。
「ふざけるなああああああああ。魔族と手を組むのか!大臣、どうなんだああああああ!」
ドインが大臣の首を片手で鷲掴みする。
顔がみるみる内に赤くなった大臣を見て、シュミム王が慌てて制止した。
「止めるんだ、ドイン。この同盟で魔族が襲ってくることは無くなるんだぞ。」
その言葉を聞いたライバは思わず席を立った。
「私は反対ですね。魔族と手を組むんだったらアッカディー王国との関係を修復する方がはるかにマシです。彼の言ってることはアテになりません。」
「私はいいわあ。タリカん所潰せるんだったら手を組んでも。」
爪をいじりながら答えるアウドをライバは睨む。
「俺はどっちでも良い。関係ねえし。」
頬杖をついたローミが気だるそうに答えた。
ドインは怒りのあまり、顔を赤くしてブルブルと震えていた。
掴んでいた大臣を投げ捨てると出口へと向かう。
「俺は領主を辞める。俺の部下が今までどれだけ死んだと思ってる。じゃあな。」
言いたいことをいうと、ドインは足早に部屋を出ていった。
ライバも席を立ち、王とマオハリをひと睨みする。
「もう一度言います。私も反対ですね。新しい領主を任ずるなり好きにすれば良い。帰ります。」
ライバも静かに部屋を出ていった。
オロオロするシュミム王に対してマオハリは余裕の表情だ。
「素晴らしい才能の持ち主だ。シュミム王は優秀な部下をお持ちですね。」
大臣はドインにつかまれた首をさすりながら答える。
「はい。ドインはあなた方と互角に戦えるくらい…。」
「いえ。もう1人の眼鏡をかけたお方。素晴らしい。是非とも私たちの仲間として。」
「でも本人にその気は。」
「大丈夫ですよ。私にお任せください。」
マオハリは赤い目を見開いて、静かに微笑んだ。




