15、ライバ領の今
「ぬっ。何だ、お前らか。」
「うわっ。でかっ。」
「失礼な。噛み殺すぞ。」
「まっ、まあ。キングウルフさん、お久しぶりです。」
「うむ。」
「クフ~ン。」
レイとタリカとキングウルフがわちゃわちゃしている。
アレスが久しぶりに母親や兄弟と会えて嬉しそうだ。
ライバ領に行くための魔法陣は、キングウルフたちの住処に繋がっている。
「ライバの町まで危険だからな。」
「レイ、なんつー所に魔法陣作ってんだ。」
「アレスが会いやすいから。」
「…。」
タリカとジャイルが呆れた顔をしているが、レイは特に気にすることなくライバの町へと向かう。
途中オーガやワイバーンを倒しながらライバの町を目指す。
「レイ、言うの忘れたがライバとは会わんぞ。」
「タリカ、ライバと知り合いか。」
「前にギルガ神聖国で会ったことがある。俺たちのことがバレるのはまずい。」
「分かった。」
4人とアレスは軽快に走りながらライバの町を目指す。
意外なことにタリカもある程度強さがあり、オーガ程度なら1人で倒せるそうだ。
王族として剣術を身につけ、ダンジョンに定期的に潜っている。
ライバの町に着くとBランクの冒険許可証を提示し、町の中に入った。
町の中は以前と同じように見える。
「ちょっと良いか。」
冒険者ギルドに入ったレイは、受付に尋ねる。
昼前に到着したからか、ギルドの中は閑散としていた。
「何でしょう。」
「この間シュミム王国に戻って来たんだが、ここら辺は変わってないな。」
「そうですか。でもここまでの道は随分変わったでしょ。」
「ああ。以前立ち寄った村が無かったぞ。」
「そうなんですよ。アウド領が悲惨でね。村や町がほとんど潰れちゃったんですよ。」
「良くここはもってるな。」
「迷いの森のおかげですかね。冒険者は食い扶持に困らないし、素材取れて売れるから前と変わりませんね。しいて言うなら冒険者が入れ替わったっていうか。」
「入れ替わった?」
「他の国に行った奴らも多いんですが、ローミ領やアウド領から来た冒険者が増えてます。ローミ領も治安悪くなりましたからね。」
「なるほどな。」
キッコーリが言う通り他国に伝手がある冒険者は離れ、その分シュミム王国内からある程度の強さがある冒険者がライバ領に集まってくるのだろう。
「じゃ、ここも治安が悪くなってるんじゃ。」
「そこら辺は我らがライバ様ですよ。睨みを利かせてますからね。素行の悪い奴は捕まえて犯罪奴隷ですよ。そこまでじゃない奴らは追い出してますよ。」
フッフッフと不敵な笑みを受付は浮かべていた。
「で、ご用件はありますかね。」
「ああ。これを引き取ってもらいたい。
「あい、ってうわっ!」
レイが魔法袋から次々と魔物の死体を取り出していく。
キングウルフの住処からここまでの道のりで倒した魔物だ。
解体するのには時間がかかるため、そのまま魔法袋に放り込んでいた。
「ちょっと時間かかりますよ。3日くらいかな。」
「分かった。5日後に来る。」
「じゃ、預かり証を渡しておきますね。」
レイは受付から預かり証を受け取り、タリカを見る。
「泊まりは無しだ。戻ろう。」
「ああ。じゃあ戻るか。」
「あそこにか。」
「当たり前だろ。他にあるか。」
またキングウルフと顔を突き合わせるのかとタリカが微妙な顔をしている。
キングウルフの住処に戻る最中、トムがレイに話しかけた。
「ライバ領はそれほど影響なさそうですな。」
「そうだな。ひとまず安心かな。これからは定期的に確認するか。」
「そうっすね。お互い足りない素材交換しましょ。」
「いいな、それ。」
ライバ領は特に戦争の影響は受けていないようだ。
レイたちは少しホッとして、タリカ領へと戻っていった。




