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復讐者  作者: 安慶
人魔戦争
241/421

14、キッコーリ町の今

 ドインとジャイルが対峙した翌日、レイはトム・タリカ・ジャイルを引き連れて久しぶりにキッコーリの町を訪れた。

タリカとジャイルは目立たないよう、冒険者のような恰好をしている。

キッコーリ町に来たのはどのような様子なのか確認するためだ。

タリカとジャイルが敵国を探るためでもある。

シュミム王国は敗戦後、ますます悲惨な状況になっている。

「お前さんたち、よお来たのお。」

 おたまを持ったエプロン姿のキッコーリ町長が台所から姿を現す。

相変わらずおたまを持っているなと思いながら、レイはタリカとジャイルを冒険者仲間として紹介した。

「おお、初めてじゃの。わしはキッコーリ。町長しとります。レイとトムとは長い付き合いでの。立ち話も何じゃから座りなされ。」

応接室に通され、各々好きなところに座る。

「キッコーリさん、これ。」

レイは魔法袋をキッコーリに渡した。

中には食料やポーション等必要な物がぎっしり入っている。

「有難い。後で酒と木を渡すからの。」

「はい。で最近はどうですか。」

「王都はもう駄目じゃな。店がほとんどないし人もおらん。こっちが今は商売の中心になっとる。」

「繁盛してますか。」

「繁盛しとるというより、もうここ以外ではろくに町が残っとらん。小さな町や村はみんな潰れたよ。食料やら薬やら必要なもんが全然足りん。」

悲しそうにキッコーリは首を横に振った。

タリカとジャイルが視線を合わせ目配せする。

「人はどうですか。」

「行く当てのある奴は皆他の国に行ったよ。で行く当ての無い奴がどんどんこの町に来よる。今は断ってる状況じゃ。」

「厳しいですね。」

「一応他の国で奴隷としてだったら当てはあるって説明しとるがの。好き好んで奴隷になる奴はいまいて。」

「そうですね。このお茶飲んだらちょっと町見て良いですか。」

「もちろんじゃ。皆に声かけてやってくれ。ノムやトモさんやリーツが会いたがってたぞい。キッコンもな。」

 懐かしい名前が出て思わずレイが微笑む。

リーツとトモは、レイたちが王都で最初に泊まった宿屋の主人だった。

兵士たちに宿を壊され、スミスと共にキッコーリ町にやって来た。

アアナさんの夫ノムと子供たち。

村にノムさんたちが経営する宿屋兼食事処が1軒だけだった時、ほとんど毎日通い詰めた。

会った後にアアナさんの墓参りをしよう。

 キッコーリに別れを告げ、家を出るとキッコンに会った。

キッコーリの息子であるキッコンは少し疲れているようだが、レイとトムを見て笑顔である。

「最近忙しくてね。町が大きくなったから。」

次期町長でもあるキッコンは、町の維持に忙しくしているようだ。

 他にも懐かしい面々と会い、町を出てアアナの墓参りをする。

町に来るときには気が付かなかったが、町の側に難民キャンプのようなところが出来ていた。

皆一様にやせていて、虚ろな目でこちらを見ている。

「思った以上に悲惨だな。」

タリカが呟いた。

「後であそこにスミスとチルを派遣する。」

 一旦中止していたレイの奴隷への勧誘を再開するべく、スミスとチルを難民キャンプに向かわせようと思う。

「そうか。レイはこうやって奴隷集めてたんだな。」

「うん。最初は奴隷商から買ってたが、最近は勧誘してる。」

「奴隷に勧誘とは。レイ殿、上手くいくのですか。」

ジャイルは懐疑的なようだ。

「なので顔が広く、この国で信用のあるスミスに担当してもらってます。他にも伝手ある人に。」

マルチ商法のような集め方だが、全く面識のないレイが声をかけるよりも成功率は高い。

「レイ。他の町や村も見てみたい。他の魔法陣は使えるか。」

「王都は良いのか。」

「王都は見つかるリスクがまだあるからな。後でまた来よう。」

「分かった。」

ドラゴンダンジョンは昨日から休眠期間に入っている。

再開するまでの1週間、レイはシュミム王国各地を案内することになるようだ。

 魔法陣からタリカ領に戻る前、トムは心配そうにキッコーリ町の方を振り返った。

これからこの国はどうなるのか。

誰も分からない。

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