12、その後
ギルガ神聖国から戻って1週間経った。
レイはタリカ領にある自分の家の屋上で星空を眺めながら酒を飲んでいた。
キッコーリ町から買った出来立ての酒だ。
香りのよい軽い飲み口で、これはこれで美味いと思う。
ジョウダイ・アサミ・ユウナの3人は、それぞれショウ・アミ・ユウという偽名になった。
黒髪では目立つとそれぞれカツラを付けることになった。
ハリナの指導の下に、ドラゴンダンジョンとゴーレムダンジョン以外に日々潜っている。
召喚されてから約1年経つが、レイとの戦闘・レベルの差が著しい。
それだけレイが戦い続けてきたということだろう。
つらつらと3人のことを考えながら酒を飲んでいると、トムが「ういっす。」と言いながら横に座った。
「3人はどうっすか。」
「ハリナの話では真面目に戦ってるそうだ。」
「そうっすか。良かったっす。」
「うん。」
2人でチビチビと酒を飲み続ける。
「で。あいつら殺して。どうっすか。」
「どうって。」
「何か、変わりました?」
「まあ。悪夢は見なくなったな。気持ちが全部晴れたわけじゃないが。少しは晴れたかな。」
「悪い夢見なくなって良かったっす。」
「まあな。」
「…これからどうします?」
「分からない。本当に。」
「うっ。」
トムの言葉が詰まった。
もしかしたらレイが死ぬかもしれないと思ったのかもしれない。
「大丈夫だ。すぐに死なない。」
トムはホッとしたようだが、まだ少し不安なようだ。
「3人のこともあるしな。ギルガ神聖国のことも気になるし。」
「そうですね。手術って何するんですかね。」
「だな。」
(これからどうするか。目標なんてあるのか、今の俺に。)
レイは星空を眺めながら肩の力が抜けていくのを感じた。




