9、密入国
ギルガ神聖国を出ると、馬車は凄いスピードで北へと向かって行く。
景色が見えないくらい速い。
だが揺れは驚くほど少なく、レイたちは快適に馬車に乗っていた。
「やっぱりスミスの鍛冶は最高だな。」
「エラも手伝った。」
「そうか。2人にかかれば最高の物が出来るな。」
レイは改めて2人の物づくりに感謝する。
「次の休憩で俺がスミスと代わる。」
「俺も御者を。」
「やめとけ。コツがいるから吹っ飛ばされる。」
「そうなのか。」
レイは高速馬車の御者をやりたかったが、ロックに止められた。
スミスとロックが交代で御者をするらしい。
レイは窓の外を眺めていたが、休憩地に近づいた時ふとミナに尋ねた。
「もうそろそろ良いかな。」
「休憩の時で良いんじゃない。」
「俺もそれが良いと思うけどな。」
「自分もミナさんとロックさんと同じですな。」
ロックとトムも同意見だ。
4人が訳の分からない会話を始めたため、マールとハリナがポカンとしている。
マールがたまらずレイに尋ねた。
「何言ってんだい。あんたたち。」
「ん?もう着くか。」
レイはマールに答えず、窓の外を再び見る。
馬車がスピードを落としたため、休憩地に近づいたことが分かる。
馬車が完全に止まると、レイは他の3人に言った。
「準備は良いか。1対1で。」
『了解。』
何をとマールが言う間もなく、4人はサッと馬車の床をめくった。
そこには3人の人間が体を縮こませて入り込んでいた。




