8、マッチョ再び
「ゴワッフォ~ン。」
「ごふっ。」
強烈マッチョなリザードホーズに突然スリスリされてレイがよろめいている。
隣では別のマッチョがアッカたちのリザートホーズにメンチを切っていた。
裁判の翌日、レイたちが帰ろうと泊まっていた塔から出た所、レイの従魔であるマッチョなリザートホーズに襲撃された。
「何でここに。」
「やっほ~ん。来たよ~。」
「ミナ?」
マッチョの陰からミナが顔を覗かせた。
「あたしもいるよ。」
「マールさん?」
「よいしょっと。スミスとロックとミナに連れてきてもらってね。」
「何で?」
「お前なあ。」
スミスは何故かあきれ顔だ。
「他のリザートホーズに主人が連れられてって、こいつらが大人しくしてると思うか?」
「ああ。」
レイは思わず膝をついてしまった。
「暴れたんだ。」
「かなりな。」
スミスが言うには、ジャイルに立派な馬車で連れられて行った後、リザードホーズたちは手が付けられない程に暴れだした。
これでは死人が出ると、急いで大型の馬車を作り直し追いかけて来たらしい。
「かなりスピードが出て大騒ぎになったからな。5日で来た。」
「アッカディー王国で新種の魔物が出たって騒ぎになってるかも。」
「お前らなあ。」
「大丈夫だ。」
ロックが苦笑いしている。
「休憩地の冒険者ギルドと商人ギルドに報告してる。町ごとの衛兵たちにも言ってるから、まあ討伐にとはならんさ。」
「はあ。」
レイたちが大騒ぎしている後ろでは、アッカとジャイルが目を丸くしている。
「これはキングリザードホーズか?」
「ただのリザードホーズです。俺の従魔です。」
「…。」
アッカとジャイルがレイのリザードホーズの胸筋を触って感心している。
「レイの従魔はどれも凄いな。」
「ありがとうございますと言っていいのか。」
「エル・キャットにフェンリル、マッチョリザードホーズか。やはりレイは勇者か。」
ずっと感心しているアッカに改めて別れの挨拶をする。
「すいません。ここで。俺たちはこの馬車に乗って帰ります。タリカさんは。」
「俺は乗る度胸無いぞ。自分の馬車で帰る。」
「私は乗ってみたいですね。」
「兄さんやめとけ。国王がマッチョ馬車に乗って死んだらシャレにならん。」
「そうか。」
残念そうなアッカとレイは握手をした。
「お世話になりました。」
「いや。こちらこそタリカ領を守ってくれてありがとう。死人も出なかったし。時間があったら遊びに行くよ。色々見せてもらえる?」
「はい。」
「ジャイルさん。」
「はい。それではここで。私もダンジョンに行きたいです。鍛錬のために。」
「喜んで。お待ちしています。」
ジャイルとも握手してレイは馬車に乗った。
出発しようとするリザードホーズたちの鼻息が荒い。
動き出そうとする馬車の窓から顔を出し、レイは改めてアッカとジャイルに手を振った。
「お元気でっっぶっ。」
急に動き出した馬車で、レイの別れの挨拶は途切れてしまった。




