7、ジャミ失踪
レイとハリナは泊まっていた塔に帰ると倒れこむように椅子に座った。
「お帰んなさい。お疲れ様。」
トムがお茶を持って来てくれた。
タックとフクン、アレスはスヤスヤと眠っている。
「どうでした?」
「お咎めなしだ。」
「良かったです。」
レイに返事にトムはニッコリと微笑んだ。
「疲れた。ハリナもお疲れ様。」
「いえ。自分の証言は少しだけでしたので。」
ハリナは座りなおしてお茶を口に運ぶ。
「早く帰ろ。明日には出発だ。」
「はい。じゃあ準備します。」
トムは荷物をまとめようとジャミを呼ぶ。
だがジャミは姿を現さない。
「あれ?ジャミは?」
「朝食後はいたんですがね。」
「…逃げたか。」
青ざめたレイは外で名残惜しそうにアッカと話しているタリカに駆け寄る。
「タリカ、ジャミ知らないか。」
「知らんが。どうした。」
「いない。」
「まいったな。」
レイの奴隷であるジャミは犯罪奴隷だ。
逃げられたと分かれば大事になる。
レイはハリナやジャイルと共に周辺を探したが、ジャミは見つからなかった。
次第に焦りの色が濃くなる。
犯罪奴隷に逃げられたと分かれば、レイだけではなくタリカも責任が問われかねない。
アッカの面目も丸つぶれだ。
「夜までに見つからなかったら教会本部と冒険者ギルドに届け出るしかないな。」
「その前に見つけたいが。」
「奴隷紋は描いたんだろ。」
「そうだった。魔力で探ってみる。」
ジャミに刻まれている奴隷紋はレイの魔力に反応する。
レイが魔力でジャミを探そうとしたその時、ジャミが吞気にスキップしながら姿を現した。
「ジャミ!」
「えっ何?」
「どこ行ってた。探したんだぞ。」
「ごめん。綺麗な町だからブラブラしてた。」
「全く…。」
呆れ顔のレイをタリカが慰める。
「良かったじゃないか。大事になる前に。ジャミ、次はレイかトムと一緒に行くように。逃げたら捕まった時大変だぞ。」
「ふぁい。」
「あのな。捕まったら次は奴隷鉱山で強制労働だ。今みたいに吞気に出来ないぞ。」
「ごめんなさい。」
しおらしくなった所を見ると、少しは反省したようだ。
そんなジャミの手には大きな袋が握られている。
「その袋どうした。」
「エヘヘ。美味しそうな物があったから買っちゃった。皆で食べよ。」
「全く…。」
やれやれといった様子で部屋に戻ったレイの目に、ヘソクリが無くなったと騒ぐトムの姿が映った。




