4、アッカディー国王
賢王と呼ばれるアッカディー国王は、タリカと同じような金髪細身の優男だとレイは思っていた。
だが予想に反して、アッカディー国王ことアッカは黒髪で人のよさそうな顔をしている。
眼鏡をかけていて、どことなくサクソウに雰囲気が似ていた。
レイたちは到着後通された部屋に入るとすでにアッカディー国王が座っており、タリカの姿を見つけると、ニコニコしながら立ち上がった。
「初めまして。タリカの兄です。アッカと呼んでください。」
レイたち一人一人に手を差し出し、握手を求める。
側にいたジャイルは苦笑していた。
立場の下の者から自己紹介し、国王は領主であるタリカの紹介で初めて立ち上がるのが通例だ。
だが、アッカはそのような儀礼は好みでは無いらしい。
国王の側近も諦めているのか、特に咎めることもしないようだ。
「立ったままだと何ですし、座りましょう。」
アッカはタリカの隣に座り、話始めた。
「タリカ、久しぶりだねえ。元気だった?」
「おうよ、兄さん。おかげさまで。」
「シュミムが攻めて来た時はビックリしたよ。」
「うちは特に被害無いよ。ケガ人は出たけど死人はいないし。」
「良かったねえ。後の処理で何か問題は?」
「特に無いけど、誘拐されて捕虜にされた人たちをどうするかなって。」
「戻りたくない人もいるだろ。困ったことがあったら兄さんに言いなさい。」
「うん。」
レイたちはデレデレとした兄弟の会話を一方的に聞かされている。
ひとしきり兄弟のデレデレ会話が続いた後、アッカはレイたちの方を向いた。
「すまない。久しぶりだったもんでね。明日の裁判のことをそろそろ話そうか。」
レイの隣に座っていたハリナがぎゅっと手を握りしめた。
「そんなに固くなることない。裁判というか公聴会というか。シュミム王国の懲罰を決めるもんだよ。シュミム王国の人間は出ないけど。」
「どういうことを聞かれるんですか。」
「王国の悪行、勇者の悪行の2つだね。レイさんとハリナさんだけではなく、他の人間も証人に立つ予定だ。」
「事前に証言は文書にして提出してるからね。それに違いないか確認するだけさ。」
タリカが補足する。
「で。」
アッカがニコニコしながらタリカに続く。
「アッカディー王国側は僕が弁護するよ。こう見えても説明は上手なんでね。」
「へっ。」
アッカディー王国は国王がレイたちの弁護に立つそうだ。
トムが驚いて間抜けな声を出す。
レイたちはアッカと別れると寝室に通されたが、眠れない夜を過ごすことになった。




