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復讐者  作者: 安慶
経済戦争
227/421

56、親子

 ポッタが解放された捕虜たちの間をかき分けていく。

1人の傷ついた男を見つけると、叫び声をあげた。

「ムカウ!」

「父さん!」

2人は泣きながら抱き合う。

 その光景をレイとトムは遠くから眺めていた。

「良かったっすね。無事で。」

「そうだな。トムも無事で良かった。」

「あんな連中に負けるわけないっしょ。」

「それもそうだな。」

 ひとしきり泣いたポッタ親子がレイたちに近づいてくる。

「ありがとうございます。なんとお礼を言ったら良いか。」

「ポッタさんにはお世話になったんで。当然のことです。」

「これからどうすんすか。アウドの町に帰るんすか?」

 トムの問いにポッタは首を横に振る。

「もう店は畳みました。あの国にはいられませんし。別の国でのんびり商売をしようかと。」

「そうですか。」

「少し落ち着いたら旅に出ます。ムカウと一緒に。」

 ポッタはムカウの頭を撫でた。

「妻の忘れ形見でね。息子に万が一のことがあったら妻に顔向け出来ません。」

ポッタとムカウは深々とお辞儀すると、砦から出ていった。

 至る所で歓声や泣き声が聞こえてくる。

行方不明になった家族を見つけて喜ぶ者。

家族を見つけられず名前を叫びながら探し続ける者。

保護した捕虜たちのいる部屋は、喜びと悲しみで満ち溢れていた。

 レイとトムは砦から出てアウドの町に向かう。

砦とアウドの町の間にある空き地には、シュミム王国の兵が縛られて座らされていた。

タリカの部下とロックウッドが人数を数えたり、身元の確認をしている。

「兵たちはどうするんだ?」

「金と交換かな。払えないんだったら奴隷にする。」

レイの問いにロックが淡々と答えながら仕事をしている。

 離れた所では、死体が整然と並んでいた。

サクソウが祈りの言葉を唱え、終わり次第火葬するのだろう。

レシーアと魔法部隊がサクソウの後方に控えている。

「レイ。」

ミナが近づいてきた。

「ミナ。お疲れ。ミナが持ってきてくれた情報のおかげで助かった。」

「うんにゃ。斥候として当たり前だよ。早く終わって良かった。」

疲れているが表情が明るい。

 実際ミナがもたらした情報のおかげで戦争が早く終わった。

勇者と呼ばれた3人がタリカ領の侵入に成功していたら、人質を取られた上に挟み撃ちにされて長引いていたかもしれない。

タリカ領側に犠牲も出ただろう。

「レイさん。トムさん。」

ゴザも笑顔で近づいてきた。

「ゴザ。お疲れ。」

「そんな疲れてないですよ。ほとんどトムさんが倒してくれたし。」

ゴザは力が余っているようで、腕をグルグル回している。

「レイさんもトムさんも休んでください。疲れたでしょ。起きた頃には大体終わってるはずです。」

「それが良いよ。騎士団長やら勇者やら相手して疲れたっしょ。」

「ミナも休め。働きづめだろ。」

「うい。」

 2人の会話を聞いていると東の空が薄らと明るくなっていく。

「夜が明けますね。」

トムが空を見上げている。

「帰ろうか。マールさんと3匹、待ってるだろうし。」

「はい。」

 2人は肩を並べて砦へと入っていった。

東の空が徐々に明るくなっていく。

今日は晴れた一日になりそうだ。

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