51、勇者
「おい。早く行けよ。」
「押すな。気づかれるだろ。」
「怖いよお。魔物が出たらどうすんの?」
3人の男が国境の抜け道の中で四つん這いになりながら喧嘩をしている。
「とにかく先に進め。」
「わあったよ。押すなよ。」
先頭の男が渋々と前に進み始めた。
「あっ。ちょっと明るくなってくる。」
「出口か。長かったな。」
「誰か強い人いたらどうすんの?」
「大丈夫だ。騎士団長が旨く引き付けてくれてる。」
「本当?」
「じゃ、お前。今から引き返して戦うか。」
「それはヤダ。」
「じゃ、付いてこい。文句言うな。殴るぞ。」
苛立った男の声に、最後尾を進んでいた男は無言になった。
先頭と真ん中の男の会話が続いていく。
「噂じゃ若い女がいっぱいらしい。」
「良いな。終わったらヤリたい放題じゃん。」
「だろ。こっちのが良いだろ。早く進め。」
「わあったよ。もう出口だ。」
「長かったな。」
3人は抜け道から這い出すと、屈んだ状態のまま辺りを見回す。
警戒するが不気味なほど静かだ。
「いいぞ。ほとんど砦の方に行ってるな。」
「これからどうすんだ。」
「建物を順繰りに襲ってく。人質取るぞ。抵抗するなら殺して良い。」
「了解。」
敵がいないことを確認した3人は立ち上がり、歩き出そうとした。
だが突然背後で大きな音がして、振り返ると今まで通っていた抜け道が完全にふさがっていることに気が付く。
「なっ。」
3人が絶句する中、強烈な光が周囲を照らした。
「眩し。」
「何だこれ。」
3人の目がようやく慣れた頃、大勢の女と1人の男が自分たちの前に立ちふさがっていることに気が付く。
「よう。クズ犯罪者。」
レイの声が周囲に響き渡った。




