49、初期装備
「今日ですかね。」
望遠鏡でアウドの町を眺めていたタリカの部下が報告する。
5日前からアウドの町に兵が集まり出し、今日町の中から煙が立ち上がるのが見えた。
執務室にはタリカの他に、レイとトム・ロックウッドの面々・タックとフクンがいる。
「タックとフクンはレイの合図で動いてくれ。レイは打ち合わせ通りに最初だけ。トムとロックウッドは前線だ。魔法部隊は上から状況を見て攻撃を。サクソウ。タイミングを見てくれ。仲間に魔法が当たらないように。」
事前に打ち合わせをしていたが、最後にとタリカが全員に確認する。
皆無言で頷き、その時を待つ。
「レイさん、その装備なんすね。」
「トム。考えることは同じだな。」
お互い顔を見合わせて苦笑した。
2人が今装備しているのは、王城で貰ったボロボロだったものだ。
実はレッドドラゴン製の鎧とミスリル合金の剣だったので、スミスに頼んで打ち直してもらった。
王都から追い出される原因となった装備である。
ペガルダンジョンを攻略した後、2人の装備はブラックドラゴンの皮鎧とアダマンタイトの剣になった。
だがシュミム王国と戦うとなったら、こちらの方がふさわしいと2人は思った。
執務室の外ではタリカの部下やレイの奴隷たちが詰めていた。
全員張り詰めた表情をしている。
「ジャミ、頼んだ。」
「分かってる。けどホントに来るかな。」
「来るだろ。正面から戦えない卑怯な奴らだからな。」
「じゃ、行くね。」
「ああ。後でな。」
レイはジャミと別れ、砦の中にある階段を上がる。
執務室の上は1つの部屋になっており、大きな窓が等間隔で並んでいた。
レイはトムやロックウッド、タリカと共に中央の窓からアウドの町を眺める。
朝からアウドの町を見張っているが、ようやく動き始めたのは日が傾き始めた時だった。
アウドの町から兵たちがゾロゾロと出てきて、隊列を組み始めている。
ミナの情報通り、最前列には隷属の首輪を付けた捕虜たちが最低限の装備を身に着け立たされていた。
「胸糞悪りいな。」
隣に立つロックが呟く。
隷属の首輪を付けた捕虜の中にはひどく殴られたのか顔が腫れている者や、泣きじゃくっている者がいた。
「勝つぞ。絶対に。」
タリカの言葉にレイは頷く。
夕暮れ前シュミム王国側の隊列が整った。
双方の陣地に明かりが灯される。
最後尾の辺りからけたたましい鐘が鳴り響き、兵たちは1歩ずつ前進を始めた。




