47、人壁
疲れた表情のミナが帰って来た。
レイは疲れているだろうと報告は明日で良いと言ったが、ミナは直ぐに伝えたいと言う。
タリカたちがミナの報告を聞くため、レイの家に集まってきた。
ミナはスープを飲みながらミナを見渡す。
一同が固唾をのんで見守る中、ミナが口を開く。
「戦力としては王国騎士団、王都管理騎士団、ローミ騎士団、アウド騎士団。あと金で集めた冒険者。ライバとドインは参加しない。全部で1万くらい。」
ミナは少し手が震えているようだが話を続けた。
「ポッタの息子さんは、たぶん。隊列の1列目。」
「1列目?」
どういうことだとレイは尋ねる。
タリカはそれを聞いて渋い顔だ。
ミナの後を引き継ぎ説明を始めた。
「1列目に攫った人たちを配置して戦わせる。前に向かっても死ぬ。後退したら味方に殺される。強制的に前にしか進めないようにする。」
それを聞いたトムは手で顔を覆った。
「捨て駒にするということか。」
ロックが前方を睨んでいる。
「人として許されないわね。」
レシーアの口調がキツい。
「それだけ勝ちにこだわるということだろう。」
皆が怒りで震える中、タリカだけが冷静だ。
「殺せるのか俺たちに。」
自分たちに罪のない市民を殺せるのかとレイは問う。
「それが狙いだろ。捕虜だね。俺たちが殺すか迷ってる間に遠距離で攻撃してくるつもりかね。」
「どうする。」
「ミナ。どうやって1列目の連中に言うことを聞かせるか分かるか?ドサクサに紛れて逃げる奴もいるだろ。」
「隷属の首輪使うみたい。奴隷商人に大量に注文してた。」
「レイよりレベル高そうな奴いそうか?」
「いないよ。ドインとドインの部下くらいじゃないかな。」
「そうか。」
実際に戦うのはレイたちだが、全体の指揮を執るのはタリカだ。
しばらくの間、腕組みをして天井を見つめていたタリカは、レイたちに言った。
「1列目のことは俺が対策考える。ミナとジャミは王都で情報収集してくれ。特に騎士団長や勇者どもがどう動くのか分かればな。ロックたちはドインとライバに張り付け。情報が無いか聞いてこい。物資送るんだったら何らかの情報手に入るだろ。レイとトムは…。」
キリッとした表情でレイたちの方を向いたタリカは言った。
「猫ちゃんや犬ちゃん撫でてて、いつもと変わりなく過ごしてくれ。解散!」
タリカの言葉を合図に全員散開していった。




