45、戦争の足音
レイとトムはジャミの言葉を聞いて固まってしまった。
一方マールは素早く状況を確認するために動く。
コップに入った水を渡すと、一気に飲み干すジャミに尋ねた。
「ジャミ、もうちょっと詳しく説明おし。」
ジャミは水を飲んで息を整えると、説明を始めた。
ポッタの息子が王都に入ったことを確認したミナとジャミは、王都内を隅々まで調べたが見つからなかった。
他にも行方不明になった商人や冒険者がいると聞き、大掛かりな誘拐が起きているのではとミナは推測する。
城以外は調べつくしどうやって城内を調べようかと画策していた所、4大領主会談が開かれることを知った。
2人は王都の外でライバと接触して従者に変装し、城内に入ることに成功した。
ライバたちが会談を行っている中ミナとジャミが城内を調べたところ、地下牢に大勢の人が捕らわれていることを突き止めたのだ。
「ポッタの息子もそこにいると。」
「だぶん。戦える人が捕まってるみたい。あとライバから伝言ある。」
ジャミは座りなおすと、レイをジッと見つめていた。
何事かと見つめ返すレイにジャミは話を続ける。
「戦争が起こる。備えてって。」
『戦争。』
その言葉にマールまでも固まってしまう。
「4大領主会談で言われたみたい。直ぐにレイたちに言ってくれって。」
「戦争って。俺達っていうかシュミムとアッカディーがか。」
「そう。そのために戦える人無理やり集めてるみたい。」
「大体理由ないだろ。最近アウド領への嫌がらせみたいにタリカ領は繫盛してるが。」
「それがね。レイのせいにするみたい。」
ライバから聞いた話によると、シュミム王国が召喚した4人の勇者の内、1人の勇者がタリカ領に攫われた。
その勇者を奪還するためにシュミム王国がタリカ領に戦争を仕掛けるらしい。
「俺のせいか。」
レイが眉間に皺を寄せる。
トムはオロオロしながら言った。
「どこかに誤解ですって言わないと。」
「どこかにってどこに?シュミム王国に説明に行ったら捕まるだろ。」
次第にレイは冷静になり怒りが増していく。
召喚して直ぐに自分を追い出したくせに、今更何のつもりだと。
「戦争は避けられないか。」
「ドインとライバと戦うってことですか。」
「それは無いって。ドインとライバは兵も出さないって。物資は出すけど。」
「良かった。ドインなんかが出てきたら俺たちが負ける。」
「どうするんすか。」
「取り敢えず朝、タリカに報告に行く。今日は遅い。寝よう。」
「そうっすね。」
「ミナは無事なのか。」
不意にミナはどうしたのかとレイはジャミに尋ねた。
最初に無事とは言っていたが、今何をしているのか。
「師匠はもうちょっと詳しく調べてみるって。どのくらいの戦力になるのかとか。どうやって攫った人を戦わせるのかとか。」
斥候としてミナはさらに探りを入れるらしい。
夜も更けたため、ジャミもレイの家に泊まることになった。
それぞれベッドに入り目を瞑るが、眠れない夜を過ごすことになった。




