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復讐者  作者: 安慶
経済戦争
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44、スライム美容液

 夜、トムがジト目で風呂上がりのレイを見ている。

レイが顔にスライムの粘液を塗っているからだ。

「また変なこと始めて。顔が腫れても知りませんよ。」

「大丈夫だよ。何回も試してるから。」

レイは顔だけではなく首や手にも塗り始めたため、トムはため息をついた。

 水確保用のダンジョンにいるスライムは、倒すと魔石の他に粘液を残す。

毒などの状態異常を引き起こすものではないため戦いに使えない代物だ。

使い道が無いと捨てられていた粘液を、何かに使えるのではとレイが集めていた。

 試しにとドリュアスダンジョンで採れる薬草を混ぜて顔に塗った所、すこぶる肌の調子が良い。

タリカ領は荒れ地でかなり乾燥しているため、唇や肌がカサカサになる。

以前は回復魔法で状態を回復していたが、スライム美容液を使えば魔法を使わずに肌に潤いを与えられる。

その上、潤いが半日続くのだ。

 レイが塗り始めて皆に紹介した所、奴隷たちの間で瞬く間に広まった。

しまいにはマールまで使い始めたので、孫のトムは少し心配していた。

「長い間使い続けても問題ありませんよね。」

トムが念を押すように確認する。

「大丈夫。毒は無いって出てるから。」

自らのスキルで毒が無いことを確認しているからか、レイは楽観的だ。

「顔に直接塗るのはねえ。」

「だって魔獣食ったりするだろ。それと一緒だよ。」

魔獣は食べるのに、魔物から採取した物を塗るのはダメなのかとレイは反論する。

 再びため息をついたトムはマールを振り返った。

マールもレイと同じく、顔にスライム美容液を塗っている。

女性の美への追及に年齢は関係ないようだ。

「トム、諦めな。」

顔に塗って余った美容液を手や首に塗り始めたマールは今後のことを話す。

「これを大量に作れたら売るつもりさね。」

「売れますかね。」

「売れるさ。特に金持ちの商人や貴族にね。今も何で肌が綺麗なんだって問い合わせ殺到よ。」

マールがニカっと笑った。

 荒れ地を旅する商人や冒険者は常に乾燥と戦っている。

自分たちがカサカサなのに宿屋や店で働く女奴隷たちの肌がシットリ潤っているため、何でだと大量に問い合わせが来ているのだ。

今は奴隷たちで使う分しか取れないが、ダンジョンを拡大してゆくゆくは商品として売る量を確保する計画をしている。

「そこまでするんすか。」

トムは呆れているが、

「当たり前さね。安定して儲けるためにはその土地でしか買えない特産品を作るのがいいのさ。」

ダンジョン産の素材は品質が安定しているため、その素材を使って商品を作る予定だ。

今は経済圏と経済圏の中継地としての役割しかないが、今後は1つの経済圏を形成していく予定である。

「2つの国から妨害来そうです。」

アッカディー王国の貴族連中とシュミム王国から嫌がらせされるのではとトムは危惧しているが、

「そのためにあんたたちは強くならんとね。強い奴がいる所を狙うバカなんてそうそういないよ。」

マールからはレイとトムが強ければ良いと言われてしまった。

 側にはタックとフクン、アレスが寝ている。

いつも通りの夜を過ごす。

「俺たちもそろそろ寝るか。」

「そうですね。明日はドラゴンダンジョン攻略しますか。」

「そうだな。朝ロックたちに声かけよう。」

「それにしても。」

「何だ。」

「ドインさんたち来ないっすね。」

「そうだな。とうとう魔族来たか。」

「そうかもです。ドラゴンダンジョンの後、様子見に行きますか。」

「行こうか。」

 それぞれが寝室に行こうと立ち上がったその時、息を切らしたジャミが飛び込んできた。

「良かった…。寝てない…。」

膝から崩れ落ちるように倒れたジャミにレイたちは駆け寄った。

「何があった。ミナは?」

「師匠無事。だけど…。」

ジャミは額の汗を拭いながら顔を上げた。

「ポッタの息子、捕まってる。城に。」

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