43、本領発揮
ミナは斥候として一流である。
どんな無茶な要求にも「分かった。」とだけ言い、断ることが無い。
機転を利かせてロックウッドだけではなく、レイたちの窮地を幾度となく救ってきた。
ダンジョンの攻略だけではなく、勇者たちの動向を探ったり、奴隷の中で斥候の才能を持つ者の教育も担当している。
レイの命を受けてキッコーリの町近くにある転移魔法陣に移動したミナは、王都には直ぐ向かわずキッコーリの町で情報を集めた。
ポッタの息子は事前の情報通り木こり亭に泊まる予定だったことが分かった。
アウドの町から他の商人と合同で旅をして町に着き、一泊した後に王都へと向かっている。
街道で危険な魔物が出たという情報も無い。
次に王都に入りスミスを通じて情報を集めた。
確かにポッタの息子は王都に入ったらしい。
王都の商人ギルドから彼がギルドに立ち寄り、書類を受け取っていたことが分かったのだが、そこから捜索が難航した。
忽然と消えたポッタの息子の情報が『王都に入って商人ギルドに立ち寄った』以外出てこない。
だがミナは諦めなかった。
捜索の最中、他にも失踪した商人や冒険者がいることが分かり、捜索の方針を変える。
失踪した者は皆若く、魔法が使えるなど戦える者が多い。
奴隷商に捕まったのではないかと探ったが何も出てこない。
何か良くないことが起こっているのではないかとミナは不安になった。
王都での捜索を始めてから3日が経ちスミスがタリカ領に帰った日の夜、ミナはジャミと防壁の上から街並みを眺めていた。
大通り沿いはポツポツと明りが灯っているが、裏通りは真っ暗で寂れていることが分かる。
「師匠。ポッタのせがれどこいるんすかねえ。」
ジャミが足をブラブラさせながら尋ねた。
「何か良くないことが起こってるかもね。」
ミナは王城へと目をやる。
奴隷商を探ってもギルドを探っても行方不明者の情報は出てこなかった。
王都から出たという情報も無い。
だとすると。
「残るはあそこだけだね。」
ミナは城を指さした。
「ですよねえ。でも勇者の情報を探ろうとしても難しいじゃないっすか。入れないし。どう探るんすか。」
「それをどうにかするのが斥候だよ。」
ミナは防壁の上に立ち、城を見据える。
斥候としての力量が試されている。
ミナは拳を強く握り、ジャミの方を振り返った。
「城に入る方法探そ。」
2人は防壁から屋根に飛び移ると、暗闇の中へと消えていった。




