21.ハイオーク
老猫の光が2匹に入っていった後不思議な空間は無くなり、元の暗い森の中に戻った。
猫たちはうずくまって泣いている。レイは2匹に声をかけようとしたが、
「避けろ!」
というトムの声に、2匹を抱えながら後ろに飛び退いた。
その直後、ブンと空を切る音が目の前から聞こえた。
「ウグルアアアアア。」
という咆哮と共に、目の前に通常のオークよりもはるかに大きいオークが立ちはだかっていた。
大柄なトムよりも大きく、複数の人間の頭蓋骨に紐を通して首から掛けている。
「ハイオークか。」
「そのようです。猫は後ろに下がって。」
「ふなぁ。」
2匹の猫が素早くトムの後ろに隠れ、レイは腰から武器を抜いた。
レイが前に出て全力で剣を斜め下から上に振るったが、ハイオークの持っていた武器と交差し、力勝負となる。
ハイオークは太い棍棒を持っており、レイの剣は棍棒に食い込んでいるが、徐々に押され始めていた。
「レイ!弾き飛ばせるか。」
「やって。みる。」
レイは膝がもうすぐ地面につきそうな体勢まで力負けしていたが、前足に力を込めた後、全身を使って剣を前に突き出した。
ハイオークがわずかに上体をそらしたのを見逃さず、トムが突進していく。
腕を伸ばしてハルバードの先端でハイオークの心臓を突き刺し、
「ギャアアアアアアア。」
という絶叫ののち、ハイオークは胸から血を噴き出しながら倒れた。
トムはレイを立ち上がらせながら、
「戻りましょう。村に。」
「魔石を。」
「諦めましょう。先ほどの声で仲間が集まるはずです。すぐに。」
レイとトムは腰を抜かしてうずくまっている2匹をおんぶして、走って村に戻っていった。




