2.街へ
祭殿を後にしたレイとトムは、文官から20万ゴールドと地味な服や生活用具の入った袋を渡された。
城の薄暗い廊下を歩いていく。
途中2人の兵士が立ち話をしていたが、騎士団長の姿を見るとそそくさとどこかに立ち去ってしまった。
廊下の突当りにある扉を騎士団長が開けると、武器と防具が大量に並べられた大部屋だった。
「どれでも好きなものを取るが良い。」
騎士団長に促され、トムは比較的見栄えが良い剣を取ったが、
「いや。それは3日後のゴブリン討伐に使う予定でな。」
と直ぐに騎士団長に取り上げられ、じゃあ何を選べばいいんだと立ち尽くしていた。
一方のレイは、部屋の隅に積み上げられていた武器と防具の前に立って、何やら漁っている。
「トムさん、こちらに来ていただけませんか。」
レイがトムを呼び寄せ、大柄なトムの体格に合う防具を選んでいた。
その防具には汚い染みが付いており異臭を放っていたためトムは断ろうとしたが、先ほどの騎士団長の態度から、きれいな物はもらえないと考え、黙ってその防具を受け取った。
同じような汚い防具をレイは選び、さらに山積みにされている武器の前に立った。
「トムさん。初心者の自分に合う武器って何がいいですかね。」
「そうですね。やはり剣がいいかと思います。レイさんは細身なので、大きくない剣で。」
レイは自分の体格に合う錆びついた剣を選び、トムに声をかけた。
「トムさんは、どんな種類の武器を使うんですか。」
「自分は大剣を。」
「それではこれが良いかと思います。」
何か黒いものが付着した大剣を受け取り、トムはうなだれた。
レイは騎士団長のほうに向かい、
「それでは騎士団長、短い間でしたがお世話になりました。私が生活に慣れましたら、トムさんのご指導は必要なくなるので兵士に戻…。」
「いや。そのまま戻ってこなくていいぞ。」
騎士団長は薄ら笑いを浮かべながらトムに言った。
何かを言い返そうとしたが、唇をかみしめ下を向いたトムを見ながらレイは話を続けた。
「それで門まで案内していただけますか。」
「いいぞ。すぐそこが裏口だから、そこから出ろ。」
「はい。トムさん。行きましょう。」
トムの背中を優しく押しながら、レイは裏口へと向かう。
裏口を出たとたん、風圧を感じるくらいの速さで門が閉められ、2人は歩き出した。
昼を大分過ぎ、あと少ししたら日が傾くという時に、2人の男は大勢の人で賑わう大通りをへ向かって歩いていく。